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2017年12月17日 (日)

Science インプラント周囲炎と歯周炎の原因菌をめぐって ⑦

続き:
2) インプラント周囲炎・歯周炎関連細菌叢の解析― ②
16S rDNA クローンライブラリー法は、用いる手技の問題から得られるデータ量に限界があったが、その後のシーケンス技術の改変(パイロシーケンス)と、これに合わせた装置の開発がなされたことにより、より多くの塩基配列データを解析することが可能になった。
 我々もこの技術を用いて、20名の被験者を対象として更に精密な細菌叢解析を行った。その結果、Red complex はインプラント周囲炎と歯周炎の両疾患部位から検出されるものの、3菌種すべて足したとしても細菌叢全体の10%程度の存在量でしかないことが明らかになった。また、既知の歯周病原細菌に注目した場合、両群ともに検出量が多い菌は Fusobacterium nucleatum であるという共通点がある一方で、インプラント周囲炎では Prevotella nigrescens が歯周炎と比較し有意に多く検出されたという相違点が認められた。これらは、インプラント周囲炎の細菌叢を網羅的に解析したことで初めて分かったことである。また、以上から、
 ①インプラント周囲炎と歯周炎の細菌叢は多くの種から構成されており、その病原性を検
   討する際に特定の細菌種にのみに注目すべきではない
 ②培養困難な細菌が約過半数を占めており、培養技術等の従来法とシーケンス技術を 
   組み合わせて解析する必要性がある
 ③インプラント周囲炎と歯周炎では細菌叢の組成が異なる傾向にある
 ④ Red complex は両疾患で必ず検出、または並はずれて細菌量が多いというわけでは
   なく、それ以外の細菌中にも病原性に関与している可能性が考えられる細菌が存在しうる
         という仮説がたてられた。
 一方、DNA を対象とした解析の場合、すでに死んでしまった細菌 DNA のデータを含んで検索がなされている可能性が高く、リアルタイムにインプラント周囲炎と歯周炎に存在する、細菌叢全体の活動性を正確に把握できていない可能性があることが否定できなかった。
 そこで我々は、細菌 DNA とともに、 RNA を用いた解析を行い、炎症状態に存在している細菌種、またそれらの細菌種の活動性(炎症を引き起こす病原因子を出す割合)を検討することとした。
 RNA は DNA より安定性が低い(すぐに分解してしまう)特徴があるが、それゆえ炎症部位に”今、存在している”細菌の存在を反映できる可能性が高いと考えたからである。この研究では11名の被験者を対象として、インプラント周囲炎と歯周炎罹患部位の歯肉縁下プラークから DNA と RNA を同時に抽出し、それらの 16S rDNA 領域の塩基配列の解読を行った。
 その結果、インプラント周囲炎と歯周炎では、炎症状態に存在し活動性が高い菌を共通して38菌種検出したものの、インプラント周囲炎では20菌種、歯周炎では13菌種の特有な細菌を見い出すことが出来た。さらに、各細菌の役割や病原性を発揮するメカニズムまで解析も同時に試みることが最善と考え、遺伝子全体のゲノム解析を行った。
 mRNA から得られた機能解析の結果、インプラント周囲炎と歯周炎では非常に類似した生態系における化合物の変換の流れがしめされた。
   





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