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2017年12月13日 (水)

Science インプラント周囲炎と歯周炎の原因菌をめぐって ③

続き:
2. インプラント周囲炎と歯周炎の細菌学的変遷
1) インプラント周囲炎に関わる病原細菌
 1965年にLoe らが行った実験的歯肉炎の研究から歯周病の主因はプラークであるという、現在にも残る基本的な概念は生まれた。その後、歯周病における部位特異性やプラークの量的要因だけで説明のつかない症例の存在から、特異的な細菌を含んだ病原性プラークの関与を謳った「特異的プラーク細菌説」が唱えられるようになると、細菌検査技術の発展と共にこの分野の研究が飛躍的に進んだ。
 1998年に被験者185名、13,261個のプラークを用いて40種の細菌を検索し、歯周炎の臨床症状との相関を報告したSocransky らのレポートは、この説に関する集大成といえるだろう。彼らはPorphyromonas gingivalis、Treponema denticola、Tannerella forsythia からなる Red complex や、これに類する Orange complex と呼ばれる細菌群が歯周炎と関連があり、特に Red complex の存在はポケット深さや歯肉からの出血に相関が高いことを報告した。
 ― In vitro や動物実験からもこれらの病原性は裏付けられており、これらの細菌は歯周病の原因菌として確立された感がある。現在、歯周病に関連したサービスでは、これらの細菌の同定が主に行われている。
 インプラント周囲炎は歯周炎と類似した臨床症状を呈することから、その原因となるプラーク細菌も歯周炎と同様であると推測され、研究が行われてきた。Mombelli らはインプラント周囲炎に認められる細菌叢ではグラム陰性嫌気性桿菌が多く認められ、慢性歯周炎に認められるそれと多くの共通した特徴が認められることを、1987年報告。
 口腔内のインプラント体表面には、天然歯と類似した経過をたどり細菌叢が形成されるとみられている。インプラント埋入後30分経過したインプラント体表面からは、同一口腔由来であると考えられる複数の細菌が検出。この事実は、同一口腔内の歯周炎部位からインプラント周囲に歯周病原細菌が伝播し、インプラント周囲炎を惹起させる可能性を示唆している。
 Qurrynen らは部分無歯顎患者にインプラント手術を行ったところ、埋入後2週間のインプラントでは同一口腔内に存在する天然歯と類似した歯肉縁下細菌叢が形成されており、13週以後には驚くべき類似性を認めたことを明らかにした。さらに歯周炎に関連する細菌の検出頻度は、インプラントと天然歯の間ではほぼ同一であったと報告。
 インプラント周囲炎罹患部位では、健常部位と比較して、高い割合で歯周病原細菌が検出されるとする報告は多い。 Shibli らは44名の被験者(健常インプラント群22名、インプラント周囲炎群22名)の歯肉縁上と歯肉縁下プラーク細菌叢を比較したところ、歯肉縁上と歯肉縁下プラークでともに、 Red complex に属する3菌種が有意に高い割合でインプラント周囲炎群から多く検出されたとレポートした。
 また Maximo らは、インプラント周囲炎の治療として外科的処置(オープンフラップデブライドメント)を行い、その治療前後における細菌叢の変化を調べている。その結果、インプラント周囲炎罹患部のプラークには Red complex が高い割合で検出されること、また治療後は総菌量の減少、またその量に対してRed complex の割合が減ることが示された。歯周病により抜歯され、無歯顎となった患者の唾液や舌表面からも歯周病原細菌が検出されることを考えると、細菌学的見地から歯周炎の既往はインプラント周囲疾患のリスクとなるといえる。





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