« Science インプラント周囲炎と歯周炎の原因菌をめぐって ④ | トップページ | Science インプラント周囲炎と歯周炎の原因菌をめぐって ⑥ »

2017年12月15日 (金)

Science インプラント周囲炎と歯周炎の原因菌をめぐって ⑤

続き:
3. ゲノム解析から明らかとなった両疾患の病原細菌叢
1) 複合感染症としてのインプラント周囲炎と歯周炎
 感染症の病原体を特定する指針は、ドイツの細菌学者ロベルト・コッホにより示され、この病原体を分離・培養し、動物実験で病原性を実証するという原則に基づき近代細菌学の研究は進み、発展してきたといえる。
 コッホの原則は結核など単一感染症における病原体の同定に有効な考え方であり、近年ではSARS(重度急性呼吸器シンドローム)が初めて出現し、新種のコロナウイルスを特定した際にも有用であった。
 1950年代になると嫌気性菌の培養技術が確立したことで細菌の分離培養が盛んに行われるようになり、様々な疾患における未知の病原細菌の同定も進んだ。しかしながら、培養法は多大な時間と労力を必要とし、
 また、実施する科学者の技術に左右されるという大問題を含んでいた。
 その後、様々な技術が細菌検査に応用され用いられたが、1980年代になると DNA を用いた分子・遺伝学的手法が細菌検査の分野でも用いられるようになった。これまでの DNA を用いた検査により、口腔内には約700種類の細菌が生息しうることが示されている。
 そして、このうちの半数以上は人工的な環境下で育てることが困難な難培養性の細菌種であることも明らかになった。一つの歯周ポケットからは30~100種程度の細菌が検出されるといわれており、歯周炎やインプラント周囲炎は、存在する複数の細菌種が複雑に連携しあって病原性を発揮し疾患の進行に関与する複合感染症であるといえる。
 複数の細菌種が存在する環境下においては、細菌 DNA を用いた解析であれば、分離や培養の過程はなく、難培養性の細菌も含め病変に存在する細菌種を同定することが可能で、かつその細菌種がどのような病原因子を発現しているかを解析することもできる。
 細菌学の世界にパラダイムシフトを引き起こした本法は、複合感染症の全貌を解明するための手法として最適であり、病変の存在する細菌種を網羅的に把握することで、その病原性を正しく評価することができるのではないかと思われた。





« Science インプラント周囲炎と歯周炎の原因菌をめぐって ④ | トップページ | Science インプラント周囲炎と歯周炎の原因菌をめぐって ⑥ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Science インプラント周囲炎と歯周炎の原因菌をめぐって ⑤:

« Science インプラント周囲炎と歯周炎の原因菌をめぐって ④ | トップページ | Science インプラント周囲炎と歯周炎の原因菌をめぐって ⑥ »