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2018年1月29日 (月)

弱くて強い植物の話(3) ①

 「人間と科学」第284回:コピー・ペーする。
 人間は、美しい花を見ると、心が癒され、幸せな気分になる。しかし、残念ながら植物は人間を喜ばせるために、花を咲かせるわけではない。昆虫を呼び寄せて、花粉を運んでもらうために、花びらで花を目立たせて、甘い香りで昆虫を誘っているのである。
 それにしても、花というのは不思議な存在である。どうして植物は美しい花を持つようになったのだろう。
 種子を作る種子植物には、「被子植物」と「裸子植物」とがある。
 裸子植物は「胚珠がむき出しになっている」のに対して、被子植物は「胚珠が子房に包まれ、むき出しになっていない」と子どもたちは理科の教科書で習う。胚珠がむき出しになっているかどうか、そんなことが種子植物を大きく二つに分けるほどの重要なことなのかと思うかもしれない。しかし、胚珠が子房に包まれたということは、植物の進化にとって大事件であった。そして、このことによって、植物は劇的に進化したのである。
 胚珠とは種子の元になるものである。植物にとって、最も大切なものは、次の世代である種子である。つまり、胚珠がむき出しになっているということは、もっとも大切なものが無防備の状態にあるということなのだ。ところが、あるとき、大切な種子を子房で包んで守る植物が現れた。これこそが被子植物である。
 子房の獲得は、植物に劇的な進化を可能にした。
 裸子植物は、風で飛んでくる花粉をキャッチして受精するために、どうしても胚珠を外に置いておかなければならないのである。
 一方、被子植物は胚珠が包まれているので、植物の体の中で安全に受精することができる。そのため、受精のための胚を成熟させた状態でスタンバイさせておくことができるようになったのだ。これにより、花粉が来ると直ぐに受粉ができるようになったのである。被子植物は、花粉が雌しべについてから、早いもので数時間、遅くとも数日中には受精が完了する。
 一方、裸子植物は、やってきた花粉を一度、取り込んでから胚珠を成熟させる。そのため、花粉が到達してから受精までに、数ヵ月から1年以上もの年月を必要としてしまう。これに比べると、被子植物の受精がどれだけ画期的なものか分かるだろう。




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