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2018年1月11日 (木)

Science 唾液とドライマウスの知識 ⑦

続き:
3) ドライマウスの治療
 ドライマウスの治療は、原因除去療法と対症療法に分かれる。原因除去療法では、薬の変更や減量、ストレスの軽減、疾患(糖尿病や更年期障害、自律神経失調、鼻炎など)の治療、う蝕・歯周病や補綴治療による咬合の改善等である。治療に時間がかかり、すぐに治療効果も現れないことも多いため、対症療法も併せて行うことが必要である。
 対症療法はドライマウスの症状ごとに異なるが、口の乾燥と粘膜痛への対応をまず行う。これらに対してよく用いられるのが含嗽薬や軟膏、保湿剤である。広島大学病院口腔検査センター診療室(当院)で使用している薬剤を示す。
(1) アズノール含嗽薬: アズレンスルホン酸ナトリウム水和物を含む含嗽薬。咽頭炎、扁桃炎、口内炎、急性歯肉炎、舌炎、口腔創傷の治療薬として用いられる。1回5~6滴を100mLの水に薄めて1日数回使用。
(2) ネオステリングリーン含嗽薬: ベンゼトニウム塩化物を有効成分とした殺菌作用のある含嗽剤。口腔内の消毒、抜歯創の感染予防として用いられる。
(3) ポビドンヨード含嗽薬: ポビドンヨードを有効成分とする外用殺菌消毒薬で、ヨウ素を遊離することにより広範囲な微生物に対して殺菌作用を示す。各種細菌のほか、真菌、ウイルスに対しても有効である。ヨウ素に対し過敏症のある人(ヨードアレルギー)には用いることができない。
(4) バイオティーン: 口の中を潤すためのジェル。粘膜に適量塗る。1日3~5回使用可能。人工甘味料としてキシリトールを使用。
 ドライスキン、ドライアイと同様にドライマウスについても、乾燥した粘膜を保護する薬剤や保湿剤を症状が軽度の時期に使用することで、症状を抑えることができる。
 ドライマウスの原因がシェーグレン症候群や放射線治療後である場合、内服薬によって唾液を出させることができる。副作用で発汗や消化器症状等が生じる場合があるが、少量から内服を開始することで副作用を軽減させることができる。無意識に唾液が分泌されているので、乾燥の管理が比較的容易となる。
 唾液腺を刺激して唾液を分泌させる方法としては、ガム噛みや唾液腺マッサージがある。ガム噛みは、唾液分泌を促す簡単な方法であるが、長時間ガムを噛み続けると顎関節症状などを起こす場合があるため、食間や食後10分間や乾く時に使うなど時間を決めて用いる方が良い。
 唾液腺マッサージは、主に大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)を刺激して唾液分泌を促す方法で、口腔リハビリテーションの一環として臨床的に応用され、その成果も報告されている。特に安静時唾液の分泌を促す効果があり、継続して行うことで薬による副作用が影響する患者でも薬の変更や減量をせず安静時唾液量の増加と口腔乾燥感の改善が得られることがある。
 口呼吸によるドライマウスの場合の多くは、睡眠時に気づかず口が開いている事が多い。マスクや口閉テープで口から水分が蒸発するのを防ぐと症状が和らぐ場合もある。また、鼻の治療で耳鼻科への受診が必要な場合もある。
 対症療法として最も重要なのは、口腔衛生管理だ。これは、どのドライマウスの原因の患者にも必要ある。唾液分泌低下によって唾液の働きが低下し、唾液の抗菌、自浄、再石灰化の作用の低下によって口腔内の細菌が増加し、う蝕、歯周病、口腔カンジダ症が生じ易くなる。これらを治療・予防できるのは歯科だけである。
 ドライマウスは早期に治療することで症状を軽減することができるが、いったん発症すると体調や生活、口腔環境の変化によって再燃したり、悪化したりすることも起こる。その変化に歯科医師、歯科衛生士は対応することが求められている。
 歯科診療で日常的に接している唾液は、時には治療の邪魔のように感じるかもしれないが、心身ともに健康で過ごすために不可欠であり、ドライマウスは、う蝕、歯周病にならぶ歯科での対応が重要な病態となっている。また、唾液の有用性は、検査の材料としても認識され、医科歯科連携で研究と臨床への応用が進められている。唾液への今以上の関心につながれば幸いである。





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