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2018年1月 9日 (火)

Science 唾液とドライマウスの知識 ⑤

続き:
4. ドライマウス

  ドライマウス(口腔乾燥症)の日本での罹患数は、約800万人と推定されており、男女比は1対3と女性に多い疾患である。女性は男性に比較して唾液腺が小さく、唾液分泌量が少ないことや女性ホルモンが影響している可能性がある。

  唾液分泌量の低下によりドライマウスが生じると、口腔乾燥以外にも口唇の乾燥、会話時の粘膜の張り付き、乾燥した食物の咀嚼・嚥下困難など、乾燥の影響が明らかなものだけでなく、粘膜炎や口内炎、口角炎、舌痛、味覚障害、口臭、義歯の不調、う蝕の増加等を生じる場合がある事を知っておかなければならない。

  後者の場合は、ドライマウスの治療を行わなければ症状がいっこうに改善しないことがある。

 1) 原因

 唾液減少の原因は、大きく3つに分けることができる。唾液分泌機能の低下によるものと体液量の減少によるもの、蒸発によるものである。さらに唾液腺細胞の数の減少や機能低下、神経伝達系の障害に分類される。

 (1) 唾液分泌機能の低下

   ①唾液腺細胞の数の減少や機能低下

   a) シェーグレン症候群では、自己抗原を認識するT細胞が外分泌腺(特に唾液腺と

    涙腺)に浸潤し、障害を起こす。そのため、唾液を産生する腺房細胞が減少し、唾

    液分泌量の低下が生じる。

   b) 頭頸部(特に口腔、咽頭)がんの治療で放射線治療が行われた場合に大唾液腺

    (特に耳下腺)が照射野に含まれると、腺房細胞が変性・消失し、唾液の産生量が

    著しく低下する。

   c) 頭頸部の外傷や手術により唾液分泌に関わる神経(顔面神経、舌咽神経、交感

    神経、副交感神経)が損傷された場合、神経の種類や損傷部位により唾液分泌に

    影響が出る。

   d) 咬合異常や咀嚼力低下は、唾液腺への刺激を低下、及び、唾液分泌を減少させ

    る。人の身体は廃用萎縮―現象が起こるため、使って刺激を入れていないと組織

    の機能は衰える。

   e) 加齢による唾液腺組織の変性(脂肪組織や結合組織の増加)はある程度生じる

    と考えられ、安静時唾液分泌量の低下に影響するともいわれる。更に、高齢に伴い

    副作用に口渇を有する服用薬が増えることによって唾液分泌機能が抑制される。

   ②神経伝達系の障害

   a) 薬の副作用により口渇が生じる最も代表的なものは、副交感神経終末の興奮

    伝達を起こさなくする抗コリン作用によるものである。神経系に作用する薬(精神

    科で用いられる薬や解熱鎮痛薬)、咳や痰・鼻水・胃酸等の分泌を抑制する薬等

    にも口渇を副作用に有するものがある。

   b) 精神疾患やストレス、更年期障害は、自律神経やホルモンのバランスに関する

    疾患であることから、唾液分泌低下を生じ易い。

 (2) 体液量の減少

    腺房細胞では、副交感神経刺激によるイオンの移動により唾液を産生し、イオン

   の移動の結果生じる浸透圧の上昇により、管腔内に水分が基底膜側から引き込ま

   れることにより水分泌が生じる。

    a) 脱水で血漿浸透圧が上昇すると、浸透圧差が無くなるため、水分を引き込むた

     めの浸透圧の上昇が抑えられ、唾液分泌は抑制される。発熱や嘔吐・下痢、多汗

     症などは脱水症の代表例である。

    b) 糖尿病では多量の糖により浸透圧が高まった血管、尿管中に、中和のため体

     の水分が移行し、尿量が増加することにより脱水が生じ、唾液分泌量ににも影響

     する。

    c) 高血圧症では、その治療に用いられる薬により唾液分泌が抑制。特に治療の

     第1選択としてカルシウム拮抗薬や利尿薬は、体液量の減少を引き起こし、口渇

     を生じ易い。

    d) 尿崩症は、抗利尿ホルモンの作用低下により多尿が起こる疾患で、その結果、

     脱水が生じ、唾液分泌も低下。

    e) 慢性腎不全の場合、腎機能が低下しているために細胞外液が増加し、全身性

     浮腫や高血圧症を合併する。治療では人工透析が行われるが、ナトリウム、水が

     除去されるため、循環血液量が減少し、唾液分泌量も減少。さらに、飲水量の制

     限も行っていることがあり、増々唾液分泌量は低下。また、高血圧症を合併してい

     ると、降圧薬や利尿薬を服用しているので更に減少傾向が強くなる。

 (3) 蒸発

    口呼吸により直接外気を吸い込むと、湿度の低い場合には口腔粘膜の唾液は蒸

   発し、乾燥する。特に、夜間は生理的にも唾液分泌量は低下しているので、就寝時

   に口唇閉鎖不全や口呼吸がある場合、「のどの渇き」や「口のこわばり」を訴えること

   がある。

    睡眠時無呼吸症候群で経鼻的持続陽圧呼吸療法 (CPAP 、シーパップ)をセットし

   ていると送り込まれた空気が口にも流れ込む為、口の渇きを感じ易くなることがあ

   る。

 

 

 

 

 






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