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2018年1月 7日 (日)

Science 唾液とドライマウスの知識 ③

続き:
2. 唾液の成分と作用~食事の楽しみと口腔の保護~

  唾液は、①血液の液体成分である血清を原料とし、②唾液腺で作られたムチンやアミラーゼ等のタンパク質等と、③免疫担当細胞の1つである形質細胞で産生された免疫グロブリン(分泌型ⅠgA)が混合して、口腔内に分泌している。99.5%の水分と0.3%の有機質、0.2%の無機質で作られ、多彩な役割を果たしている。

 1) 飲食に関係する機能

  唾液の第1の役割は、おいしく食べることにあり、食物を口に入れてから咀嚼して味わい、嚥下するまでのすべてのステップに関わっている。

  (1) 食塊形成作用:咀嚼した食べ物をまとめ、さらに噛み砕いて細かくしたものを一塊として、嚥下、消化し易くする。水分とムチンなどのタンパク質が関わっている。

  (2) 消化作用:アミラーゼは、デンプンを分解する消化酵素で、唾液中のタンパク質の約半分を占める。

  (3) 溶媒作用(味覚の補助作用):唾液の水分に味覚物質が溶け、味蕾に結合することでさまざまな味を感じる。亜鉛結合タンパクであるガスチンも味覚に関わっている。

  (4) 潤滑作用:食べ物が粘膜に付着するのを防ぎ、咀嚼、嚥下を円滑にする。

  (5) 自浄作用:歯や粘膜表面に付着した食物残渣を洗い流す。唾液中の水分とともにタンパク質も関わっている。

  2) 口の働きと環境を守る機能

  口腔は、適度な温度と湿度に加えて、飲食によって豊富な栄養が供給され、微生物の生育に適する環境となっている。ヒトの口腔内には腸内フローラに匹敵する約700種類の細菌が常在菌として生息するといわれている。常在菌の毒性は弱く、バランスのとれた細菌叢は、外部からの強毒性菌の侵入を防ぐ重要な役割を有しているが、そのバランスや量の変化によって う蝕、歯周病や粘膜炎を発症させる。又、口は、飲食や呼吸などに依る刺激により障害を受け易い処でもある。唾液は、これらの生物学的、物理学的、化学的刺激に対する防御機能を持ち、口の働きと環境を守ることを介して全身の健康維持に大きく関わっている。

  (1) 抗微生物作用:唾液には細菌、真菌とウイルスの増殖や付着を抑制する様々な成分が含まれている。代表的なものとして、①リゾチーム(細菌の細胞壁を構成する多糖類を加水分解して溶かす酵素)、②ラクトフェリン(鉄と結合する糖タンパク質で、細菌の発育に必須の鉄を奪うことで細胞を死滅させる)、③γ-グロブリン(免疫グロブリンで、唾液では分泌型ⅠgAが主体、微生物の付着を阻害)、④ヒスタチン(カンジダ菌に対する抗真菌作用)がある。

  (2) 歯の保護(緩衝作用、被膜作用)と再石灰化作用:緩衝作用は、飲食で低下したpHを中性に戻す作用で、主に炭酸・重炭酸緩衝系(Hイオン+HCO3イオン―H2 CO3― CO2 + H2O )が関わっている。唾液の分泌速度が上がると重炭酸イオン(HCO3-)濃度も上昇し、咀嚼により安静時の10倍以上になる。飲食によって唾液の分泌が促進されると、飲食物やそれを原料として う蝕原性菌が産生する酸(Hイオン)で低くなったpHを効率よく中性に戻し、歯を脱灰から守るという合理的なシステムが作られている。

  唾液由来の糖タンパクを含むペリクルは、歯の表面を覆い、酸から保護している。また、唾液は、ハイドロキシアパタイトの成分であるCaやリン酸塩をエナメル質表面に補給している。

  (3) 粘膜の保護と修復作用:ムチンは、保湿作用を有するとともに食物などによる刺激からも粘膜を保護している。また、上皮成長因子等の増殖因子も含まれ、粘膜の修復作用を有する。

 

 






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