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2018年1月 6日 (土)

Science 唾液とドライマウスの知識 ②

続き:
1. 唾液の分泌~量と質の変化~

 唾液は、体液の1種で、3対の大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)と口腔粘膜の結合組織や筋肉内に含まれる500~1000個の小唾液腺(口蓋、舌、口唇、頬、臼後部に分布)によって産生され、導管を通って常に口腔内に分泌されている。1日の分泌量は、1~1.5Lにも達する。代表的な体液である血液とは異なり、外分泌液である唾液は、さまざまな生理的・病的要因によって分泌量や質が変化している。

 1) 量の変化

  唾液は、刺激が無い状態(安静時)でも少しずつ分泌され、口腔粘膜や歯の表面を潤している。安静時唾液は、700~800mL/日で、分泌速度は平均0.3~0.4mL/分であるが、日内変動が大きく、睡眠中には分泌速度が最も低下していて0.05mL/分以下になる。口腔環境を守る唾液の様々な作用が十分に発揮されないことから、就寝前の飲食は、細菌の増殖や歯の表面の脱灰などを促進し、う蝕、酸蝕症などの発生・進行に繋がりやすい。また、体内水分量も安静時唾液量に大きな影響を与え、夏季には発汗で体内水分量が減り、唾液量も減少する。

 2) 質の変化

  唾液は、食物の摂取によって分泌量が大きく増加するが、それに加えて質にも変化が起こる。安静時には顎下腺から分泌される唾液が全体の約70%を占め、耳下腺(約20%)や舌下腺、小唾液腺(合わせて約10%)からの唾液の割合は少ない。一方、咀嚼、味覚、嗅覚等の刺激によって分泌が促進される刺激時唾液は、分泌速度が約7mL/分と速く、短時間に大量の唾液が分泌されるだけはでなく、耳下腺からの唾液が50%以上になる。耳下腺では、唾液を産生する腺房は漿液性腺房のみで、デンプンの消化酵素であるアミラーゼを含み、粘性の低い唾液を分泌する。量と耳下腺唾液の割合が増えることは、咀嚼、嚥下や味覚など食事に関わる機能にとってきわめて合理的な変化である。

 3) 精神状態による変化

  唾液腺は、交感神経と副交感神経の2種類の自律神経で支配されている。どちらの刺激でも唾液の分泌が起こるが、2つの神経のバランスによって量や成分が変化する。

  交感神経刺激では神経末端からノルアドレナリンが放出されて腺房細胞の受容体に結合すると、ムチンなどのタンパク質の分泌が引き起こされる。副交感神経ではアセチルコリンが放出され、ムスカリン受容体に結合して主に水分が分泌される。このため、緊張やストレスによって交感神経が優位になると普段に比べて水分が少なく、粘調な唾液が分泌されることになる。一方、リラックスしている食事の時には副交感神経が優位になり、水分の多い唾液が分泌される。

 4) 加齢による変化

  加齢に伴う唾液腺の変化に関しては、腺房の数が減り、脂肪組織や結合組織で置換されることが知られている。高齢者では、一般に体内水分量が減少しており、これらの結果として、若い時よりも唾液量が低下することが想像される。一方で、加齢による唾液量の有意な変化は無いという報告もあるが、高齢者では唾液産生の予備能力が減少していることに異論はなく、この状態に唾液分泌を抑制する薬物の服用などの刺激が加わると口腔乾燥症(ドライマウス)を発症し易いことが推測される。

 5) 軟食による変化

  咀嚼せずに飲み込むことができる軟らかい食品は、唾液腺への刺激に乏しいことになる。動物実験でも、液状食では唾液量だけではなく、唾液腺の重さ、細胞数やタンパク質合成など、形態と機能ともに低下することが報告されている。人でも噛まずに飲み込める食事を続けていると同じ現象が生じることが想像される。軟食傾向にある本邦では、唾液腺の発達を促す面からも、小児期から咀嚼の重要性を伝え、食事内容と食べ方について指導することが大切である。






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