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2018年2月14日 (水)

Clinical 大規模災害犠牲者身元確認と臨床歯科医 ⑤

続き:
<死亡者への対応>
(1)国内では― ①
  生存者の治療等、災害医療については一般臨床医が担当することになるが、死亡者の身元確認についてはいわゆる警察歯科医があたることになる。勿論、警察歯科医が生存者の歯科治療をすることについては問題ないと思われるが、身元確認作業は必要となった場合は専門家としてこの任にあたるべきである。
  従って、災害に関する組織では、災害歯科医療班と災害犠牲者身元確認班は別にすべきであると考える。
  今後、日本歯科医師会、あるいは都道府県歯科医師会で改正されていくと思われる災害対策マニュアルにおいても、歯科分野での医療班と確認班の作業を同じ部署で扱うか否かは検討を要するところであろう。
  一案として、災害対策マニュアルの中では災害医療については詳細に記述し、身元確認については、連絡経路、組織構成、注意事項程度に留めておけばよいのではないかと思う。
  なぜなら、災害での身元確認方法や死体の検査方法は、通常の身元不明死体の場合と全く同じであり、違いといえば遺体の数の多少だけである
  従って警察歯科医が通常の身元確認・死体検査に利用できる、「身元不明死体の法歯学的個人識別・検査マニュアル」を作成しておき、これを災害犠牲者識別にも適用すればよいわけである。
  次に、生前の歯科記録が入手できる場合と、できない場合の災害死亡者の識別と歯科医師のかかわりについて考えてみたい。筆者(橋本)は、法歯学的個人識別を2つの場合に分けて考えている。1つは、前もって生前記録が回収でき、生前と死後の歯科的特徴の比較が可能な場合の「歯科的個人識別」であり、
  もう1つは、生前記録がなく直接の照合ができない場合に、死体の検査所見をもとに該当者を推定する「歯科的検査」である。
  前者は主として閉じられた災害に、後者は開かれた災害に適用される。通常の歯科的個人識別は、生前死後の歯科的証拠をもとに両者の異同を判断するものであり、これは、臨床歯科医も担当が可能である。
  身元不明死体の個人識別は、確実に身元が判明した後、身元確認所の発行をもって終了。
  しばしば警察と歯科医師の間で、死体検案書が問題となることがあるが、身元確認書と検案書は異なるものである。死体検案書とは、医師が自分で治療していない人が死亡したときに検案して出す書類であり、一方死亡診断書は自分の治療していた人が死亡したときに検案して出す書類を言っている。
  検案書、死亡診断書に関する規則は、『医師法施行規則』の第三章・業務【死亡診断書の記載事項等】第二〇条と、歯科医師法施行規則の第三章・業務【死亡診断書の記載事項等】第一九条の二に記載されている。
  その条文を見ると医師法施行規則では、「医師は、その交付する死亡診断書又は死体検案書に、次に掲げる事項を記載し、記名捺印又は署名しなければならない」となっているのに対して、歯科医師法施行規則では「歯科医師は、その交付する死亡診断書に、左の事項を記載し、記名捺印又は署名しなければならない」となっている。
  この2つの条文から、死亡診断書は医師も歯科医師も書くことはできるが、死体検案書については医師のみであって、歯科医師は書くことができないということになる。
  多数の死体が回収された際には、時間が経過すればするほど身元確認作業は歯科医師の手に委ねられることになる。そうなれば確認作業現場の医師の数は減ってくる。その結果として、死体検案書作成に支障をきたすことになる。
  この点について、名古屋空港で発生した中華航空機墜落事故の教訓の一つとして、死体検案書を書く医師の確保があげられているが、日本航空123便墜落事故(1985年)の際にも経験したことである。






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