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2018年2月21日 (水)

トランプのアメリカに住む<2>―②

続き:
 とはいえ、彼らのように世界経済の周縁に居住し、英語力も乏しい者たちが、気軽にフェイクニュースを製造し、世界の中心部に行き渡らせることができたのは、彼ら以前にネット上にすでにフェイクニュースの種が多数存在したからでもある。再びスブラマニアンによれば、彼が聞き取りをした若者は、「英語はお世辞にも流暢とはいえず、トランプやクリントンについて、何週間にもわたり5~10本の記事を毎日書けるとはとても思えない。だが幸いなことに、今回の大統領選挙では数多くのオルタナ右翼系ウエブサイトが、マスコミのニュース記事に似せたフェイクニュースを熱心に発信していた。
 トランプ自身がツイッターで発信する単純なデマから、『ブライトバート・ニュース』や『NationalReport.net』の組織的捏造記事まで、右翼系メディア全体を通じてイデオロギーが真実を圧倒していた」(『WIRED』同上)。
 だから彼らは、ただそうした記事を切り貼りし、フェイクニュースのより過激で、空想的なバージョンを増殖させていけばよかったのである。
 ロシアの諜報のような政治的企図をもった発信と、マケドニアの若者たちのような金目当ての発信は、2016年の米大統領選でフェイクニュースを氾濫させていった2種類の典型的な陥穽である。勿論、これら以外にもフェイクニュースの具体的な発信源があった可能性があるが、構図的にはこの二つの典型のどちらかと結びついていたと考えられる。
 誰もが発信者になれる IT は、その匿名性によりマケドニアの若者からロシアの諜報機関までが「普通の誰か」として参入する余地を残す。しかも、アクセスの相互性を利用して情報の受け手は自動的に分類され、当人が受け入れやすい情報だけが伝えられるから、フェイクニュースはなかなか見破られない。
 こうしたネット空間の特徴は、立場が激しく対立した2016年の米大統領選において、ロシアの諜報機関で干渉をしていくのに格好の環境だった。しかしこの場合、まず存在したのは、誰もが自分を偽って真偽の怪しいメッセージを発信することのできるネット環境のほうなのであって、ロシアの諜報機関はこの環境を利用しただけなのである。




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