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2018年2月25日 (日)

トランプのアメリカに住む<4>―②

続き:
 当然、ここにおいて最も敵視されるのはマスメディアである。「マスメディアへの疑いの目は、ソーシャルメディアのアルゴリズムにより強化されていく。マスコミ批判のニュースを読むと、ユーザーには次々と、マスメディアの課題や信頼性を指摘するニュースが表示され、同じ考えの友人がいいね!を押すようになり、さらにマスメディアに対する疑いが深まるような仕組みになっている。何を信じればよいのか、混沌とした状況が生み出された」と、『ネットメディア覇権戦争』(光文社新書、2017年)で藤代裕之は書いている。
 そもそもTVの場合、他の様々な視聴者が見ている中での候補者の公的な視覚的な印象は重要だった。だから一連のTV討論で、ヒラリー・クリントンは教科書通りにTVが与える彼女の公的印象を統制しているように見えた。ところがインターネットは、フィルターバブルによりユーザーと候補者の間にもっとはるかに閉じた世界を形成している。TVが画面のなかの候補者の印象を操作しようとしてきたのに対し、ネットはより直接的に、個人の感情や嗜好に訴えていく。ネットの情報はあまりにも大量に、分散的に流れるのでもはや全体をコントロールすることは不可能である。
 政治的リアリティを成り立たせるメディア論的な位相のこの転換は、大統領選末期、2016年の夏から秋にかけて生じていた。
 クレイグ・シルバーマンによれば、この数ヶ月間で、フェイスブック上で展開される「共有」や「反応」、「コメント」の重心が、大手マスコミから流れるニュースからフェイクニュースに劇的に変化していたのを確認できる (Silverman、Craig、"This Analysis Shoes How Viral Fake Election News Stories Outperformed Real News On Facebook"、Nov. 16、2016 )。この時期にフェイスブックは、大統領選で大手マスコミが握ってきた議題設定機能を粉砕して、それをロシアの諜報戦略からマケドニアの若者たちが製造したものまでの偽物たちの世界に受け渡していく最大の媒介者となったのだ。
 結局、こうした世界では全体を統制するのではなく、粗製乱造でも情報量を爆発的に増やした者が有利になる。トランプはこのネットの世界をフルに利用して大統領の座を獲得し、世界をさらなる混乱に導いていった。彼は、今もツイッターで莫大なフォロワーに向けて「本音」を発し、それを拡散させて話題作りをし、やがてその話題がTVに取り上げられることで自分の幻影を雪だるま式に膨らませる。
 インターネットの情報は無料であり、それはフェイスブックやLINEで二次、三次、四次の発話者に媒介されて無限に拡散し、その過程で情報の真偽はほとんど問題にならなくなる。
 このようなメディア環境では、自分自身を「ネタ」にできるトランプのような過剰に露出志向の人物が有名性を獲得していくのだ。ここで演じられる有名性は、TVを舞台に演じられる有名性とは根本的に異なる成り立ちをしている。




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