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2018年2月 4日 (日)

Science オーラルヘルスに関しての抗菌性洗口液 ③

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 WHOは、抗生物質などの抗菌薬に対する耐性菌の出現と発症によって毎年70万人が死亡しており、2050年には耐性菌での死亡者は1,000万人を超えるとして抗菌薬の乱用に警鐘を鳴らしている。我が国もまた、2016年に感染症対策関係閣僚会議において薬剤耐性(AMR)対策アクションプランを発表し、医療分野における抗微生物製剤の適正使用を求めている。
 口腔細菌感染症は命を奪う疾患にもすることも少なくなく、抗菌薬療法は歯科医療において避けることができない。歯周病などの口腔慢性感染症でも適切な使用が求められている。
 筆者(奥田)は、薬学部で教鞭をとったことも踏まえて『デンタルバイオフィルム感染症への抗菌薬療法の智慧』を執筆した。歯科医療でも、①適切でない量の投与、②治療途中での中断、③長期間投与など薬剤耐性菌が発生し易い状況を作らないようにすべきであると解説した。
 細菌は巧妙な薬剤耐性メカニズムを獲得し、染色体、プラスミド、トランスポゾン上の耐性遺伝子を伝達して耐性菌を拡大させてしまう。昨今、歯周治療における抗菌薬の経口投与が増えてきているが、歯周病学会などが発表しているガイドラインに沿って、長期の抗菌薬使用は避けなければならない。
 ヒトに生息する約100兆の細菌 (microbe) の集合体 (ome) であるマイクロバイオーム (microbiome) は、約37兆と考えられているヒトの細胞とコミュニケーションをとりながら身体の生理機能を調節している。腸管内のマイクロバイオームは、腸内細菌フローラである。
 細菌の遺伝子を一纏めにして調査するメタゲノム解析などによって善玉菌の優勢な腸内フローラは、心や精神の状態にも関わりながら健康に貢献することが明確にされ、究極のソーシャルネットワークと呼ばれるようになった。このネットワークを歪めるのは、高脂肪食と抗菌薬内服である。
 プロバイオティクス (probiotics) はギリシャ語の「健康のために」という意味に由来し、ビフィズス菌、乳酸桿菌、乳酸球菌などの善玉菌を送り込んで代謝産物で腸管内を酸性にし、悪玉菌の増加を抑え、有害物質を減少させて健康増進に役立たせる戦略である。
 フレバイオティクス (prebiotics) は、腸管内に共生する善玉菌の選択的な栄養源となって、腸内フローラに善玉菌を誘導して健康の増進維持に役立つ食品を摂る戦略である。一方、善玉菌の腸内フローラを破綻させるのは抗菌薬であることが明らかにされ、抗菌薬乱用による健康破綻がもたらされてしまう。
 プロバイオティクスによる口腔感染症、口臭の予防に関する系統的レビューやメタ解析がなされ、善玉菌を優位に定着させることは難しく、特定の善玉菌やそこから抽出したものを使い続けることが要求されている。口腔内に善玉菌を定着させる戦略には、斬新な組み替え DNA 技術などのブレークスルーが必要と考えている。
 抗菌性洗口液は、口腔内細菌フローラを攪乱してしまうというレビューもあるが腸内細菌フローラを乱すことはない。口腔内プロバイオティクス戦略には、評価のある臨床研究の積み重ねとメタゲノム解析による口腔細菌フローラの意義の解明が不可欠である。
 





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