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2018年3月 8日 (木)

メガ貿易協定の限界 ⑥

続き:
 日本に関わる具体的な例をあげよう。
 先に述べた知的所有権に関して、TPPでは米国の要望から著作権保護期間が作者の死後70年といったん決まったが、TPP 11の交渉の中で主にベトナムからの申し立てによりこの条約は凍結した。日本は50年と欧米より短い期間であり、期限の切れた作品を新たに商品化したり多くの人の間で共有できるという価値からして保護期間を延長すべきではない。
 しかし、TPPと並行して進む日本とEUの経済連携協定では、著作権保護期間はTPPと同じ70年に規定されてしまった。TPP 11で凍結されたと安堵したのもつかの間、日EU協定が発効されてしまえば国内法は変更され、結局米国とEUの巨大コンテンツ産業は今まで以上にに日本から利益を得られることになる。
 米国に至ってはTPP 11で凍結されようがされまいが、別の協定によって思い通りの成果を得られたわけだから大満足だろう。
 また12月10日からアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されるWTO閣僚会合では、新たな分野として電子商取引が提案される可能性があり、途上国や国際NGOの間で警戒が高まっている。WTOには電子商取引を定めたルールは未だ無いが、個別のFTAやTPP等のメガ協定ではすでに独立した分野として詳細な規定が盛り込まれている。
 いずれも GAFA (グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの略)に代表される巨大 IT 企業が求めるデジタル経済にとって必須のルールだが、これをWTOに逆に持ち込もうという流れだ。私たちはこのように関連し合うルールの書き換えにこそ最大限の注意を払う必要があろう。
 世界の貿易体制はWTO時代を経てメガ協定時代に入り、そしてメガ協定は難題に直面している。表向きは「新たな協定が誕生した」と華々しい演出をされていても、TPP 11が示すようにそこには矛盾と限界が確実に露呈している。
 この混乱と混迷はもうしばらく続くだろうが、その先にどのような貿易の体制(レジーム)を構築できるかに私たちと地球の未来はかかっている。
 自由貿易を進める側も、そして私たち国際市民社会も、方向性や原理は正反対だが、それぞれの対案を必死で探しているのである。





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