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2018年3月 4日 (日)

メガ貿易協定の限界 ②―<1>

続き:
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 TPP 11は当初から足並みにばらつきが見られた。米国市場へのアクセスを期待していたベトナム・マレーシアにとって、米国離脱でTPPの魅力は激減し、発効へのインセンティブは弱まっていた。カナダ・メキシコは8月以降の米国とのNAFTA再交渉が最優先課題だ。南米4カ国間では「太平洋同盟」(チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー)が進展しており、必ずしもTPPだけに依存していない。チリー・ペルーは中国を入れた新TPPを提案したこともある。
 一方、TPP推進組は日本、豪州、NZである。豪州・NZには、米国という強力な競争相手が去った後、TPPで日本へ農産物を輸出できるという訳があった。
 こうしてそれぞれ異なる思惑と温度差のもと始まったTPP 11の交渉では、米国市場アクセスと引き換えに各国が米国の要望を受け容れ譲歩した項目の扱いが問題となった。たとえば、ベトナムは、米国への繊維製品輸出の拡大と引き換えに、国有企業の開放や医薬品特許の長期化を呑んできた。こうした国々は当然、「見返りがないならこちらも支払う必要がない」と譲歩していた条項の削除や再交渉を求めたのだ。
 しかし早期妥結を目指す日本・豪州・NZは時間のかかる再交渉や削除は避けたい。そこで考え出されたのが、「凍結」という処理。― 米国が復帰するまで特定の凍結条項は効力を持たせずペンティングし、米国が戻ったら元の内容に効力を持たせるという極めて異例の扱いだ。米国離脱後も、残された協定は米国の動向に左右される。つまり皮肉なことにTPPはやはり「米国のもの」だ。
 当初、各国からの凍結・再交渉の要求項目は60~70にも上ったという。医薬品特許、投資、国有企業、政府調達、電子商取引、労働等その分野は多岐にわたった。これに対して、元のTPPをできる限り変更させないよう日本政府は各国の要求を極力減らす調整に邁進してきた。
 結果、「大筋合意」での凍結事項は、20項目まで絞り込まれた。日本政府は「凍結による日本への影響はなし」と発表しただけで、マスメディアは「大筋合意」の成果を讃えるばかりで、詳しい検証はほとんどされていない。
 しかしこの凍結項目こそが「TPPの有害条項リスト」であり、初期の70項目の要求も含めて考えれば、米国がTPPを通じて他国にどれほどの無理を呑ませてきたのかを示す揺るぎない証拠となっている。そして、これらは他のメガ貿易協定においても激しい対立点となっている点がきわめて重要だ。





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