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2018年3月 6日 (火)

メガ貿易協定の限界 ④

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 ダナン会合後の動きは加速している。
 閣僚声明で挙げられた4項目については、会合後すぐに日本政府と各国との間で決着に向けて調整が行われているという。想像以上の異例のスピードであり、日本政府のTPP 11にかける執念を感じざるを得ない。署名は2018年1月初めが目標とされており、茂木大臣は2018年に選挙を控えるマレーシアやベトナムに対し、早急な国内手続きをするよう念まで押しているという。このままいけばカナダが署名できずTPP 10となる可能性も十分ある。
 国内報道では米国が復帰するかどうかにのみフォーカスがあてられているが、TPP 11は今後新しい参加国を得ることも想定されている。具体的には、TPP交渉中から参加に前向きな姿勢を示してきたフィリピン、タイ、台湾、韓国、インドネシアの5カ国だ。
 興味深いのは、米国政府寄りのシンクタンク「ピーターソン国際経済研究所」が2017年10月に出したワーキングペーパー「アジア太平洋地域だけでの進行:米国抜きの地域貿易協定」である。ここでは今後、米国が取りうるいくつかの協定のオプションを挙げ、それぞれの経済効果を算出しているのだが、上記の5カ国を加えた「TPP 16」が明確に提示されている。ここから想像できるのは、米国は当面TPPに戻るつもりはなく、しかしその間に日本を中心としたアジア太平洋地域のTPP 11をTPP 16にまで拡大することを「推奨」しているのではないかということだ。
 当然、日本政府もそれを「了解」して進めているのであろう。そう考えた時、日本には特段の経済メリットもないのに「米国がいつか戻る」「日米FTAの歯止めになる」と苦しい説明を繰り返す日本政府の行動の道筋がつく。
 この文脈の中で、日米FTAの開始も双方で合意済となっている可能性もある。実際、2017年11月17日、米国のウィリアム・ハガティ駐日大使が日本記者クラブで会見し、11月上旬の日米首脳会議で「日米FTAを含むあらゆる選択肢を話し合った」と暴露し、日本側の「FTAに関する議論はしていない」との説明を一蹴した。
 米国の側といえば、NAFTAや韓米FTAの再交渉も思うように進まず、トランプ政権の通商交渉はまだとらえにくい面がある。だが、そんな中でも、例えば11月9日に来中したトランプ大統領は、中国に対する米国の貿易赤字について強い不満を表明する一方で、総額2500億ドルもの中国企業による対米投資(製造業での提携支援や天然ガスの開発)や米国製品(ボーイングやGEの航空機や、クアルコムの半導体、米国産牛肉など)の大量購入の商談を成立させた。2国間FTAの貿易不均衡を解消するためには貿易協定のルールではなくモノを売りつければよいという、正にトランプ式の単純な「ディール」だ。
 このような圧力は、2国間FTA以前に今後日本にも当然降りかかってくるだろう。現在は交渉が中断されている米中投資協定の交渉再開を求める声が米国ビジネス界に根強くあるが、こちらも動き出すことになれば、世界の貿易にとって大きな変化が訪れる。
 各国のメガ協定離れのさまざまな動きもある。マレーシアは米国と2国間交渉の可能性を模索しているし、カナダも中国との自由貿易交渉の準備をしている。前述した太平洋同盟は、米国のTPP撤退後、日本を含むアジア太平洋地域の国々との貿易体制強化を目指している。





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