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2018年4月13日 (金)

トランプのアメリカに住む パート3 ハーバードで教える ①

吉見俊哉(東大大学院情報学環教授)さんの小論文「ハーバードで教える」の処をコピー・ペー:
 今回、約1年のボストン生活を決めた主目的はハーバード大学で教えることにある。過去10年近く、私(吉見)は東大の教育改革に関与してきた。そのなかで嫌というほど東大の可能性と限界、困難を知った。それは、日本の多くの総合大学に共通する困難と限界、可能性でもあろう。日本の大学は何をどう変え、どこに向かえばいいのか――。机上の知識なら山とある専門書を読めばいいし、散々になされたきた議論のデータもある。しかし、吉見はハーバードで自分が教えてみたことで、虚心坦懐に東大とハーバードではどこがどう違うのかを肌感覚で理解したいと考えた。
 誤解のないように書き添えておくが、自分は「ハーバードの教育」を理想化することはない。今の日本では、「ハーバード式」「ハーバード流」云々と書名に銘打った本が少なくとも百数十冊は出されているのだ。これは年々増加傾向にあり、1980~90年代にはせいぜい年に5冊程度だったのが、2004年以降、ほぼ毎年10冊以上が出版され続けている。グローバル化や大学世界ランキングの浸透のなかで、日本の一流大学は米国のトップユニバーシティに及ばないとの見方が広がったことの証左だろうか。「ハーバード」への関心拡大は、「東大」への幻滅と表裏をなしているのだろうか。
 ここにはたしかに、「ハーバード」を特別視することで日本人の劣等感に訴え、より多くの読者を集めていこうとするメディアの戦略が見え隠れする。「ハーバード」というブランドの卓越性は、「東大」というブランドを頂点から引きずり下ろし、人々の関心を海外に向けていくのに大いに有効なのだ。2000年代以降、就職先の1番人気が国内大企業から外資系企業に移行していったように、進学先の1番人気も「東大」「京大」から「ハーバード」「スタンフォード」に移っていくだろう。そのようなグローバル化の言説戦略に、私たちは捕えられてれているのかもしれない。
 しかし、「ハーバード的なるもの」は日本人の劣等感には、根拠のないブランド戦略の結果とばかり言いきれない面がある。日本の大学は、アメリカの大学が当たり前のように実現できていることを、いまだに実現できていない。それが本音である。ハーバード大学で実際に教えてみることで、日米の大学で何がどう異なるのか、「東大」と「ハーバード」の間の実質的な距離の中身は何なのかを実感できないか。これが、私(吉見)にとっての渡米の目的だった。そして実際、吉見の授業は秋学期を終えたところだが、東大での長年の経験と比較して、「ものすごく違う」との実感である。その違いの根幹は、大学教育を個々の教師の営為に委ねるか、エリート育成の総合的システムとして運営するかの違いにあるのだが、今回は、両者の違いで経験したことを具体的に書いてみたい。
 昨年秋学期は「日本のメディア研究(Japanese Media Studies)」という大学院科目、今年の春学期は「日本の中のアメリカ(America in Japan)」という学部科目を担当。渡米の数ヵ月前、最初に苦労したのはシラバス(授業計画)の作成だった。今回の授業の為に、英文で10ページに及ぶ詳細なシラバスを作成しなければならなかった。毎週、それぞれ何を目的にどんな素材を扱うかを明示し、3本程度の英語の課題文献を詳細に指定するのだ。シラバスのフォーマットは明確に決まっており、複数のモデルを渡されてそれを参考に作成するように言われた。
 実際、日本の大学のシラバスはせいぜい1ページ15週分のテーマを並べて終わりだから、この日米の差は歴然としている。実際、日本の大学のシラバスならば、1科目当たり1時間もあれば書けてしまうが、ハーバードでは1科目のシラバス完成までに1週間近くを要した。正直、それは論文を1本書くのと同じくらい大変だった。
 授業が始まってからも、シラバスは決定的な意味を持ち続ける。授業に最初に書いたシラバス通りに進み、大幅な方針変更はNGである。教師だけでなくTA(ティーチング・アシスタント)も学生も、シラバスに従って準備を進め、毎週の授業が進めれる。だからある意味で、日本の大学に比べてずっと自由度は小さい。なんて窮屈なんだ、先生がフリーハンドで話の流れを作れるほうが創造的ではないかと思われるかもしれない。
 だが、ハーバードの同僚に聞くと、皆口を揃えて「シラバスは学生との契約書」だと言う。教師はシラバスで授業が提供する内容を詳細に示し、学生はそのシラバスを見て授業の受講を決めるのだから、その時点で両者は契約を結んだことになる。教師も学生も契約違反はできない。教師が契約内容を変えて別のことを教えるのはご法度だし、学生も契約通りにレポートを出さなかったらその学生は落第となる。
   http://masa71.com/     更新したので宜しく。





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