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2018年4月20日 (金)

トランプのアメリカに住む パート3 ハーバードで教える ⑧

 

 当然ながら、それぞれ自分の職務は、その分野の全国的な標準に照らして自分の職務を遂行しているのであり、常に全国的、世界的な規模での競争を意識している。大学業務の専門分化は、職員が自分の専門業務を個々の知識のローカルな力関係に左右されずに遂行できるための前提条件。

 シラバスやTAと同じく、最近では日本の大学でも専門的なアカデミック・アドミニストレーターの必要が叫ばれている。―望ましい方向だ、しかし、人材の養成は、これまで教授や諸委員会に委ねられた決定権を小さくして、専門の職員に移管していく意思決定の仕組みの転換と並行させなければ無意味。もちろん、入試や成績、学位授与、教員人事等、教学に関する若干の業務は教授陣の専権事項だが、

 大学業務の中には、非専門家である教授たち合議して決めるよりも、高度に専門的な職員を養成し、そうした専門家に委ねたほうがいい業務も多いのだ。教授たちは、自分たちが結果的に保持してしまっている意思決定権のある部分を積極的に手放すことによって、初めて過剰な大学業務から解放されるのだ。

 学生の履修科目数を半減させることと同じく、教授らの意思決定の仕組みの改革は簡単なことではない。正面突破で事を運ぼうとすれば様々な抵抗・反発も予想。―だからむしろ、日本の大学でもどうすれば教職員が、もっとメリハリの利いた大学生活を送れるようになるかをかんがえたほうがいい。

 学期中の教育への深い関与は大学教師にとって根本である。この点では、日本の大学よりもアメリカの大学のほうが、より徹底した関与を教授陣に要求している。

 問題は学期外、就業時間外の業務の多さである入試から諸々の組織運営上の業務まで、日本の特に国立大学で教職員が抱える外部的業務は多岐にわたるが、一度、午後5時以降、また祝祭日や休暇期間中は、教職員は一切業務しない、絶対に委員会を開かないことを徹底的にやってみたら如何。実に多くの支障が生じると思うが、その一つひとつを労働時間の拡大ではない方法で解決していく道を探るべきである。

 日米の大学間、また東大とハーバードの間に横たわる距離は、以上の現場レベルの差に止まらない。むしろ、圧倒的に、多く語られてきたのは、アメリカのトップユニバーシティの豊かな資金力に日本のいかなる大学も太刀打ちできないことだった。

 施設面でも、ハーバードの学内に配置された駐車場や大学バスの循環システム、ヤード(メイン・キャンパス)の内外にある学生寮の充実ぶりを見ると、たしかに日米の差はソフト以前にハード面で大きいと痛感させられる。

 これに対して日本の大学は、国の予算の削減に苦しむだけでなく、18歳人口の急激な減少に直面している。現在の約120万人が、20数年後には約80万人までに減少。このままでは早晩、相当数の大学が経営困難の陥る。

 社会人学生や留学生を大幅増大し、しかも学びの質を向上させていく一石二鳥の戦略を編み出さない限り、日本の大学の内実は現状より劣化していくのを免れないだろう。

 個々で必要なのは、現状の弥縫策では無い。

 シラバスにしろ、TAにしろ、アカデミック・アドミニストレーターにしろ、アメリカの大学で機能しているからとそれだけ部分で導入しても結果は形ばかりのもので終わる。現状への接ぎ木では大木は育たない。必要なのは、将来を見据えた根幹的な構造改革、― これである。

 これには教育面では学生の履修科目数の半減、運営面では合議制偏重から専門性ある職員による標準化された意思決定への移行が第1歩となる。日本の特に国立大学は、あまりに多くの責任と権限、教育上の役割を個々の教授に負わせ過ぎてきた

 今も、1人1人の教授や准教授に「改革」に向けて重すぎる責任と負担を負わせている。しかし、日本の大学がまず解き放たれなければならないのは、大学教育とその運営のこうした過剰に教授中心の仕組みそのものなのだ。

 大学教授は、大学という大きなドラマの中である役割を与えられてはいるが、決して作者でも、主役でも、興行主でもないのである。

 






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