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2018年4月29日 (日)

Science タバコ煙の歯周組織への影響 ④

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 喫煙者の歯周病病態増悪、治癒不奏功、再生療法の効果減少を示す臨床研究報告は多数存在。その一方で、実際の喫煙者の生体内変化を検討するために、必要と思われる実験動物での歯周炎発症から治癒に至るモデルの提示はほとんど無い。
 禁煙がヒト体内に及ぼす影響としては口腔、鼻腔、気管支、肺にタバコ煙が直接暴露して、局所粘膜の損傷、機能障害といった直接的な為害性に加え、粘膜面や末梢循環血液からタバコ煙成分が吸収され、全身的にタバコ煙成分が循環することにより、為害性を及ぼす間接的な作用があげられる。
 喫煙の影響を検討するにあたり、これまでラットを用いた絹糸結紮による実験的歯周炎モデルに於いて、タバコ煙を直接吸引させる系、ニコチンを含む飲用水を飲ませる系、または喫煙に加え咬合性外傷やストレスを併用する系を用いてタバコ煙成分が歯槽骨吸収に及ぼす影響について報告されている。
 報告により多少の差異はあるものの、いずれの報告もタバコ煙あるいはニコチン投与により歯槽骨の吸収量が亢進することで一致している。
 一方、マウスを用いた実験的歯周病モデルでの喫煙、タバコ煙の影響についてはこれまで検討されていない。
 そこで、我々はマウスを用いて喫煙習慣を模した実験的歯周炎の発症から治癒に至る研究モデルの作成を試みた。まず、マウス実験的歯周炎モデルにCSCあるいはニコチンを腹腔内投与、すなわち喫煙により体内に吸収されたタバコ煙成分が歯周組織の破壊に及ぼす影響について検討した。
 CSCあるいはニコチンを3日間連続で腹腔投与した後、Abeらの方法に従い絹糸をマウス上顎左側第2臼歯周囲に結紮した状態で7日間経過させることで、マウス実験的歯周炎モデルを作成した。
 なお、実験群に腹腔投与したCSC内に含まれるニコチン量はもう一方実験群(ニコチン投与群)のニコチン濃度に一致させた。その結果、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を腹腔投与した対照群の結紮側と比較して、CSCまたはニコチンを投与した実験群では歯槽骨吸収が有意に増加した。CSCあるいはニコチンを投与した群での結紮側における歯槽骨吸収量を群間で比較すると、統計学的に有意な差は認められなかった。また、組織学的な検討によりPBSを前投与した対照群では結紮側において有意に破骨細胞数が増加した。
 対照群、CSC群、ニコチン群ともに絹糸非結紮側では歯槽骨の吸収は認めなかったことから、この実験系において体内に存在するCSCあるいはニコチンそれ自体は歯槽骨吸収を起こさないことが示唆された。
 また、CSCとニコチンでは絹糸結紮側において歯槽骨吸収量に差を認めなかったことから、歯槽骨吸収にはニコチンが重要な役割を果たしているとかんがえられる。
 対照群と比較してCSC、ニコチン群の絹糸結紮側において破骨細胞が増加したことから、次に所属リンパ節である顎下リンパ節において破骨細胞分化因子であるreseptor activator of NF-kB ligand (RANKL)の遺伝子発現を検討した。
 その結果、対照群と比較してCSCあるいはニコチンを投与した対照群においてRankl 遺伝子発現が有意に上昇していた。すなわち、絹糸結紮により付着したプラークによる細菌感染やメカニカルストレスで惹起された歯周組織の炎症の情報を抗原提示細胞が感知して、所属リンパ節に遊走して同情報を伝達し、顎下リンパ節におけるRankl 遺伝子発現を上昇させ、そのRankl 遺伝子発現の増強により結紮側での破骨細胞の分化を誘導すると考えられる。さらに、CSCまたはニコチンの存在下では、さらに破骨細胞への分化誘導がより促進され、歯槽骨の吸収が亢進するものと考察される。




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