« Science タバコ煙の歯周組織への影響 ⑥ | トップページ | 弱くて強い植物の話 (6) ② »

2018年5月 1日 (火)

弱くて強い植物の話 (6) ①

「人間と科学」第287回 稲垣栄洋(静岡大学農学部教授)さんの「植物の移動・分布のチャンス」について:コピー・ペーする。
 植物は動くことができないが、移動をして分布を広げるチャンスが2回だけある。
 1回目は、「花粉」。
 植物は風で花粉を移動させて、受粉する。植物の個体が移動するわけではないが、遺伝子レベルでは、こうして移動して遠くに子孫を残すことができるのだ。しかし、花粉による移動は、移動した先にパートナーとなる受粉相手がなければならない。そのため、まったくの新天地に分布を広げるということはできない。
 種子を作る植物は「種子植物」と呼ばれる。
 植物の進化を見ると、種子植物より古いタイプの植物であるコケ植物やシダ植物は、種子ではなく胞子で移動する。胞子は種子と似ているように思えるが、種子植物では受精する前の花粉に相当する。そして、受精後、大きく移動することは無いのである。
 ところが種子植物は、受精前に花粉として移動し、受精後に種子として移動。この種子によって、植物は劇的に分布を広げることができるようになった。しかも、種子は乾燥に強い。地球の歴史をたどれば、種子植物の誕生によって、植物は、水辺を離れて、内陸部へ進出することが可能になった。そして、地球は植物の惑星になっていったのである。
 固い皮で守られた種子は、乾燥に耐えることが出来る。そして、いつまでも発芽の時を待ち続けることができるのである。よく、長い時を経て見つかった種子が芽を出したとニュースになることがあるが、種子は時間を超えることのできるタイムカプセルだ。そして、そのタイムカプセルは、時間だけでなく、空間も自在に移動して分布広げるカプセルなのだ。
 空間を超えることのできるといっても、何もしなければ種子は移動することができない。そのため、植物の種子は、遠くへ移動するための様々な仕組みを発達させている。
 たとえば、タンポポが風で種子を飛ばしたり、ひっつき虫の別名を持つオナモミなどの植物が動物の毛や人の衣服にくっつけて種子を運ばせるのも、種子を遠くへ運ぶための工夫だ。
 植物の種子が発達させている作戦の中でも、秀逸なのが、「食べさせて運ばせる」という方法である。
 たとえば、スミレなどは、アリに運ばせるという方法を用いている。
 スミレの種子には「エライオソーム」というゼリー状の物質が付着している。この物質は脂肪やアミノ酸、糖分を含んでいて、栄養価が高い。そのためアリは、エライオソームを餌にするために種子を自分の巣に持ち帰る。このアリの行動によってスミレの種子は遠くへ運ばれる。
 しかし、アリの巣は地面の下にある。地中深くへと持ち運ばれたスミレは芽を出すことができない。しかし、続きがある。
 アリがエライオソームを食べ終わると、種子が残る。種子はアリにとっては食べかすのゴミなので、アリは種子を巣の外へ運んで捨ててしまうのだ。このアリの行動によってスミレの種子は見事にアリの巣の外に脱出し、遠くへと運ばれているのである。
 正に、「食べさせて運ばせる」のである。





« Science タバコ煙の歯周組織への影響 ⑥ | トップページ | 弱くて強い植物の話 (6) ② »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/413185/73404111

この記事へのトラックバック一覧です: 弱くて強い植物の話 (6) ①:

« Science タバコ煙の歯周組織への影響 ⑥ | トップページ | 弱くて強い植物の話 (6) ② »