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2018年5月28日 (月)

どうなる!「働き方改革」 ③

続き:
 裁量労働制を巡る議論はその後、野村不動産の過労自殺問題に移っている。
 東京労働局は2017/12/26、野村不動産に対し、前日の25日付で「特別指導」を実施したことを明らかにした。企画業務型の裁量労働制を本来適用してはならない営業職に広く違法適用していたことを理由に、社長を労働局に呼んだという。野村不動産も裁量労働制の違法適用で是正勧告を受けたことを明らかにした。
 野村不動産が裁量労働制を違法適用していた問題は、国会でも野党が繰り返し問題にした。その際、安倍首相や加藤厚労相は、裁量労働制の違法適用を取り締まっている例として、野村不動産への特別指導に言及していた。
 特別指導発表後の朝日新聞の取材で、野村不動産の50代男性社員が過労自殺として労災認定されていたことが判明した。労災認定は、特別指導の発表と同じ日――― 2017/12/26。
 朝日新聞の取材では、野村不動産への特別指導の端緒は遺族による労災申請だった。こうした事実を朝日新聞は2018/03/04、朝刊で報道した。
 労働基準監督署が行う労災認定が公表される事は無い。企業名を含めて過労死事案が明白になるのは、遺族が記者会見などで公にした場合に限られる。
 厚労省が野村不動産の過労自殺事案を公表しなかったこと自体は、今のルールを逸脱しているわけではない。
 問題は、厚労省がわざわざ特別指導を発表した意図だ。労働基準監督官は労働基準法違反があった場合に是正勧告を出すが、これも公表はされない。
 特別指導の基準や手続きを定めた規定は無く、特別指導の対象となった企業は電通に続いて2例目だったことを厚労省は明らかにしている。
 電通の場合、特別指導の対象となったことは国会での答弁で明らかにしており、記者会見で発表されたのは野村不動産が初めてだ。
 何故、特別指導だけを発表したのか。政府の意図を巡って、国会では議論が続いている。
 裁量労働制の拡大を断念した政府だが、高プロの導入を目指す姿勢は崩していないのだ。
 高プロが適用されると、一般の労働者に適用される労働時間の規制が全て外される。時間外労働の割増賃金だけでなく、休日・深夜労働、休憩などの規制もなくなる。裁量労働制が知られるようになったことで、野党は高プロを「スーパー裁量労働制」と批判し始めた。賃金と労働時間の関係を完全に切るという意味で、このように表現されることには理由がある。
 高プロが適用される業務は、厚労省令で定めることになっている。現時点で想定されているのは、金融商品の開発、ディーリング業務、アナリストなどだ。なお、高プロは裁量労働制とは異なり、仕事の進め方について労働者に決定権があることは必要とされていない。
 政権は高プロを「時間によらず成果で評価する制度」と説明している。一部メディアも、高プロを「成果で評価する制度」「脱時間給」等と表現。
 しかし、現在の法案には、成果に応じた賃金の支払いを義務付けるような規定はない。
 年収要件(1075万円以上を想定)はあるが、適用されても成果に応じた賃金がもらえるとは限らない。
 高プロの適用者には、従来の労働時間規制に代わる健康確保措置が必要になる。
 まず、1年に104日、4週で4日の休日を与えることが義務になる。さらに、①臨時の健康診断を実施する、②終業から始業まで一定の休息時間(インターバル)を与える、③1ヵ月または3ヵ月について労働時間の上限をもうける、④2週間の休日を年1回以上与える―― の4つの措置から1つを選んで追加しなければならない。
 こうした制度になっているため、高プロは労働時間規制を外す制度では無く、規制の組み替えだという指摘もあるのだ。
 しかし、労働時間規制を外す代替措置として、これで十分だろうか。今の法案では、4週間で4日だけ休ませれば、残りの24日は24時間働いても問題にならないことになる。
 例えば、追加措置の4つの選択肢の中から臨時の健康診断を削除し、追加措置の選択肢を3つにするだけでも健康確保の効果は変わるだろう。
 高プロの対象者には年収要件があり、適用するには本人の同意が必要になる。企業と交渉力がある労働者にしか適用されないというのが政府の主張だが、職場での力関係を考えると妥当なのか。この点も議論になることが予想される。
 高プロを導入するのかしないのか。導入するにしても今の制度設計のままなのか、修正するのか。高プロの扱いは今後の国会論戦の焦点だ。





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