« どうなる!「働き方改革」 ④ | トップページ | Report 2018 介護ロボット ① »

2018年5月30日 (水)

どうなる!「働き方改革」 ⑤

続き:
 最後に、安倍政権が「働き方改革」を進める理由について、簡単に述べる。
 長時間労働は過労死や過労自殺の原因になっている。労働市場が正規と非正規に二極化している問題も良く指摘されてきた。いずれも日本型雇用が抱えるマイナス面で、政権が解決しようと考えるのは理由がある。
 また、実現会議が開かれていた時期に「電通」の新入社員が過労自殺していたことが明らかになったこともあって、「働き方改革」の目的が、労働者の健康を守ることであるという理解があるのかもしれない。
 しかし、安倍政権が強調しているのは、経済政策としての「働き方改革」だ。「働き方改革は、社会政策にとどまるものではありません。成長戦略そのものであります」。安倍首相も施策方針演説でこう強調している。
 「働き方改革」の背景にあるのは、働く人を増やし、賃金を増やすことで経済成長につなげようという考え方だ。少子高齢化が進む中で、労働力を維持するためには、働いていない女性が労働市場に加わり、健康な高齢者にいつまでも働いてもらう必要がある。
 長時間労働を是正すれば、こうした人々が労働市場に出てくる。「同一労働同一賃金」が実現すれば非正規で働く人の意欲が高まる――。
 これが「働き方改革」の論理だ。
 「働き方改革」の実質的議論は、実現会議が設けられる前にスタートしている。安倍政権は2015年9月に「1億総活躍社会」を掲げ、「1億総活躍国民会議」を設けた。時間外労働の上限規制も、「同一労働同一賃金」も、国民会議で議論され、2016年6月に閣議決定された「ニッポン1億総活躍プラン」に盛り込まれている。
 今の安倍政権は2012年12月にスタート。よく知られるように、安倍政権の経済政策は当初、①大胆な金融緩和、②積極的な財政政策、③成長戦略の「三本の矢」を柱にした。
 2013年3月には黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任して、「2年度でインフレ率2%達成」を目標に掲げた。
 本来なら民間の労使交渉である春闘にも、安倍政権は積極的に関わってきた。2013年9月から政労使会議を開き、企業側に対して積極的な賃上げを要請した。
 2014年6月、経団連会長に榊原氏が就任して以降、その傾向が強くなっている。
 総活躍プランでは、3年間の「アベノミクス」の成果が強調される一方で、の本経済の将来に対する強い危機感が表されている。構造的課題として強調されているのが少子高齢化だ。
 「1億総活躍社会」は、少子高齢化を解決するための考え方であり、そのために必要な政策として、「同一労働同一賃金」や長時間労働の是正が位置づけられている。
 総活躍プランでは、①希望を生み出す強い経済、②子育て支援、③安心につながる社会保障―― の3つが「新三本の矢」として打ち出された。
 強調されているのは、「成長と分配の好循環」であり、「同一労働同一賃金」は、最低賃金の引き上げとともに、賃金政策として意識されている。
 総活躍プランは、「アベノミクスの第2ステージ」をうたっている。「アベノミクスの第1ステージ」では確かに、雇用や企業業績など一部の経済指標に好転が見られた。しかし、賃金上昇が思うほど広がらず、インフレ率の目標も達成できていない。
 一方で、脆弱な子育て支援に対する批判が強まった。「成長と分配の好循環」を前面に出す総活躍プランからは、そうした状況に対する安倍政権の当時の危機感が浮かび上がってくる。
 総活躍プランの延長にある「働き方改革」もまた、安倍政権の展開してきた経済政策の文脈の中にあるのだ。





« どうなる!「働き方改革」 ④ | トップページ | Report 2018 介護ロボット ① »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/413185/73585944

この記事へのトラックバック一覧です: どうなる!「働き方改革」 ⑤:

« どうなる!「働き方改革」 ④ | トップページ | Report 2018 介護ロボット ① »