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2018年5月13日 (日)

「安倍事案」の泥沼 ③

続き:

 とはいえ、一党支配体制のもとでも、何とか公平・中立性を確保する工夫はなされてきた。第1に、本省キャリア官僚は、予算や法令などの、一般的な政策内容に携わるものの、個別の事案処理には関わらないことである。

 政策は、確かに政権与党の政治的選好を反映する党派的・価値的なものとしても、個別の案件に関しては、政治家に弱いキャリア官僚は関わらない。個別の事務処理は、ノンキャリアを中心とする出先機関やあるいは自治体で行い、国の政治家の圧力からはフリーに、全国民に公平に行政運営を行う。

 例えば、国有地払下の個別案件は、キャリア官僚の多く居る財務省本省ではなく、国の政治家から離れた現場・出先機関である近畿財務局が行う。名古屋の公立学校で誰を呼んで講演するかは、文科省本省ではなく、政治から何重にも離れた現場である学校で行う。個別の案件に、本省の容喙(ようかい)をさせずに、現場処理をするわけ。

 第2に、ノンキャリアの多い現場・出先機関に対して、個別案件に関して、政治家や圧力団体からの圧力などはありうる。これに対しては、現場・出先の事務処理を、本省キャリア官僚が定めた法例・内規(法律もキャリア官僚が実質的に立案)によって縛ることで、現場限りの特例扱いをさせないように行っている。こうすれば、現場・出先での公平・中立性は維持できる。

 現場・出先のノンキャリアは、様々な特別扱いを求める政治家・圧力団体の要求に対して、「ルール上、できません」と回答。そして、本省のキャリア官僚は、「個別の案件はこちらでは処理できません」と回答する。

 いわば、本省と現場・出先の上下間で、良い意味での「盥回し」をすることによって、行政の公平・中立性を確保する工夫が行われてきたのだ。

 もちろん、完全な意味で公平・中立性が維持されてきたわけではない。政治家に弱いキャリア官僚は、現場・出先で扱われる個別案件に介入して、政権与党・圧力団体の要望に「配慮」してきたのも事実だ。

 公共事業の華やかな時代の「個所付け」は、この典型である。そうはいっても、本省キャリア官僚は、何とか政権与党や圧力団体の要望を、一般的な基準に組み込むことによって、公平・中立性を両立するように努力する矜持を持ってきた。

 また、政権与党の側も、長期永久政権が自明であったので、ことを焦って無理強いをするよりも、熟柿戦術で公平・中立性を害しないように要望を実現するという大人の構えがあった。


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