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2018年5月21日 (月)

裁量労働制について ③

続き:
 働き方改革関連法案に裁量労働制の拡大と高度プロフェッショナル制度の創設を首尾よく盛り込んだ安倍政権は、国会審議における野党対策も考えていた。「ねつ造データ」はその1つだ。しかしその策略は、早期に破綻。
 1月29日、の衆議院予算委員会で立憲民主党の長妻昭議員は、裁量労働制の下で働き、過労死に追い込まれた事例を多数列挙して、裁量労働制が拡大すれば労働時間の歯止めが無くなり、過労死が更に増大するという「全国過労死を考える家族の会」の懸念の声を伝えた。
 それに対し安倍首相が答弁したのが問題の「ねつ造データ」である。
  厚労省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均な、平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもあるということは、御紹介させていただきたいと思います。
 と安倍首相は答弁し、データを示して反論した形となったのだが、これが事実をねじまげた「ねつ造データ」だった。筆者(上西)は1月31日、に加藤勝信大臣が調査名(平成25年度労働時間等総合実態調査)と時間数に言及した事から、実際の調査結果に当たり、疑問点を2月3日、以降、ヤフーの5本の記事(ヤフーニュース個人)にまとめ、世間に問うた。
 1本目の記事は、「なぜ首相は裁量労働制の労働者の方が一般の労働者より労働時間が短い『かのような』データに言及したのか」(ヤフーニュース 個人、2018/02/03)。「ねつ造データ」の問題点については、2018/02/21、の衆議院予算委員会中央公聴会にて公述人として筆者(上西)が意見陳述を行ない、その公述原稿を同じくヤフー記事にまとめて公表した(2018/02/21)。
 この記事の疑問点を野党が質疑で取り上げ、また、野党合同ヒアリングで厚労省に対し疑問点を追及していく中で、この答弁がまったく正当な根拠を欠いていた事が明らかになって行く。
 簡略に問題点を指摘すれば、一般労働者の9時間37分という数値は調査結果に無いものであり、法定労働時間の8時間に、「平均的な者」の「最長」の1日の法定時間外労働の平均を足して算出した数値だった。
 他方で企画業務型裁量労働制の労働者の9時間16分という数値は、「平均的な者」の「労働時間の状況」(実労働時間とは異なるもの)を単に尋ねたものだった。
 そもそも比較できないものを無理に比較している事、一般労働者については「最長」の1日の法定時間外労働のデータを利用している事、8時間に満たない勤務状況の者を無視している事など、幾重にも問題のある比較だったのだ。
 しかし、2月5日から始まった野党の追及に対し、2月14日に安倍首相が答弁を撤回するものの、データについては「精査」していると言い続け、一般労働者の数値に「最長」の日のデータを利用していた事を厚労省が明らかにしたのは2月19日になってからだった。
 また、個票データを提出させたところ異常値とみられるものが多数見つかったのだが、それについても政府は「精査中」との答弁を続け、裁量労働制に関するデータの撤回を行ったのはようやく2018/03/23、になってからだ。
 データは撤回されたものの、誰がこのような「ねつ造」と言える比較データを答弁用に作らせたのかは、まだ判明していない。このような比較が不適切である事は厚労省の担当者は分かっていたはずであり、裁量労働制の拡大のための論拠として、無理やりねつ造された比較データであったと判断して良い。
 実はこの「ねつ造比較データ」は、2015年法案の閣議決定直前の2015/03/26、に厚労省から当時の民主党の部会に提示されたものであり、2015年と2017年の塩崎恭久厚労大臣(当時)の答弁でも使われていた。
 問題の淵源は、2015年の労基法改正案(残業代ゼロ法案)までさかのぼるのだ。安倍首相も加藤大臣も、用意された答弁を読んだだけだと問題を厚労省に押し付けており、誰がこのような「ねつ造比較データ」の作成を命じたのか、真相究明に乗り出す姿勢を示していないのだ。





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