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2018年6月13日 (水)

文明と歴史、そして病気(1)ー①

「人間と科学」第288回 小長谷正明(鈴鹿病院名誉院長)さんの研究文を載せる。コピー・ペー:
 ヴェメツィアの鳥― イル・メディコ・デッラ・ペステ
 ヴェネツィアは異空間、海に浮かぶ中世の小島だ。ビザンチン風のサン・マルコ教会や、アーチの列柱とバルコニーが重なる宮殿、ゴンドラが集う波止場やその向こうの教会は、いわゆる泰西風景画そのものだ。
 小舟が行き交うグランド・キャナル(大運河)に架かるリアルト橋は『007/ロシアより愛をこめて』のシーンで見覚えがある。すべてがまるで夢の中の景色のようで、細い路地の建物の壁すらも古色を帯びており、この島のどこに立っても、見回すだけで千余年の歴史が感じられてくる。
 狭い通りに入ると、延々と土産物屋が連なり、つい心の中で皮肉を言ってしまう。
 「現代の『ヴェニスの商人』はみな土産物屋になってしまったのだ」と。
 そこには、決まってカーニヴァル用の仮面が売られている。ピエロのような帽子に、目の周りに金砂銀砂の隈が施されていて、ショー・ウィンドー越しに、この模様は三叉神経第2枝、これはバタフライ・シェイプなどと、どうでもよい診断をしながら眺めていると、奇妙なマスクが目に飛び込んできた。一見すると肌色の鳥であり、それも美しくない。頭は禿げていて、嘴は太めで長い。インドで見た、ハゲワシそっくりな顔であり、店の中には、その仮面に黒くて裾の長いガウンで細い棒を持っている、怪しい人物の絵ハガキがあった。店の女性に聞くと『イル・メディコ・デッラ・ペステ』、ペストの医者と答えた。
 14c. 中頃に、東方からやってきたペストは黒死病と呼ばれ、ヨーロッパの人々の1/4とも4割ともいう命を奪った。さらに土着の伝染病になり、約2億人を犠牲にしたという。高い致死率は、治療に当たる看護人や医師にも及び、パリのノートルダム寺院の治療所、オテル・ヂューでは、毎日何百人も運ばれてくる黒死病患者に献身的に対応した修道女たちは、流行が過ぎると101人中62人が召命されていた。




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