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2018年6月19日 (火)

Clinical 歯科治療における緊急時の対応 ⑤

続き:
4) 全身疾患の有無
※ 歯科診療に於いて急性増悪の可能性ある全身疾患とは
循環器疾患 
        高血圧、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全、心臓弁膜症、解離性大動脈瘤
脳血管障害
        脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脳動脈瘤 等
呼吸器疾患
        喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD) 等
代謝・内分泌疾患
        糖尿病、甲状腺機能亢進症 等
精神科疾患
        パニック障害 等
その他   てんかん、感染症 等
 上のいずれの疾患においても、コントロール状態が良好であれば急性増悪する危険性は低いと考えられるが、重症である場合やコントロールが不良な場合は、そもそも歯科治療の不適応な場合がある。
 よって、初診時の医療面接の際には、単に全身疾患の有無を聴取するだけでなく、重症度、コントロールの状態、投薬内容についても聴取し、必要に応じて全身疾患の状態を主治医に照会する必要がある。
 また、歯科治療前に、その日または最近の状態、投薬等を最近変更したか、などを聴取してから歯科治療を始めるように心掛ける。
5. 緊急時の初動対応
 緊急時の対応としてすぐに行う対応を「初動対応」という。意識が無い場合、心停止を疑い、一次救命処置(BLS)へと進んでいくか、意識が有る場合、あるいは意識が無くても正常な呼吸をしている場合、心停止以外の偶発症が疑われる。よって、緊急時の初動対応は一次救命処置(BLS)とそれ以外の対応に分かれる。
1)一次救命処置(BLS)
 意識(反応)がなく、呼吸がないか異常な呼吸(死戦期呼吸)が認められる場合は心停止と判断して、即座に一次救命処置(BLS)を開始する必要がある。一次救命処置(BLS)は心肺蘇生(胸骨圧迫と人工呼吸)とAEDを組み合わせた処置の総称であり、気道異物の対応も含まれている。
 心停止と判断したらすぐにスタッフを集め、緊急通報(119番通報)を指示し、胸骨圧迫を開始。もし院内にAEDがあればそれを使用する。これらの一次救命処置(BLS)の手順はガイドラインで示されており、それに従って行えばいいが、このガイドラインは定期的に改訂されているため、医療従事者は最新の内容を理解し、実施できなくてはいけない。
(1) 「JRC蘇生ガイドライン2015」による一次救命処置(BLS)
 「JRC蘇生ガイドライン2015」は、国際蘇生連絡委員会(ILCOR)で作成されたコンセンサス(CoSTR2015)に基づいて、日本蘇生協議会が作成した2015年版の日本版ガイドラインが公開されている。
(2) 気道異物への対応
 一次救命処置(BLS)の特殊な状況である「気道異物」の対応について、窒息が疑われる場合、つまり声が出ないか十分に強い咳ができない場合には、緊急通報(119番通報)し、成人や1歳以上の小児では「腹部突き上げ」、「胸部突き上げ」、「背部叩打」を組み合わせて繰り返し行うことが推奨されている。
 窒息が原因で反応がなくなった場合には、直ちに胸骨圧迫を開始し、一次救命処置(BLS)のアルゴリズムを実施する。「腹部突き上げ」によって腹部臓器が損傷していることがあるため、「腹部突き上げ」を行ったら、必ず医療機関で腹部臓器の損傷の有無を確認してもらう必要がある。
(3) 歯科治療における一次救命処置(BLS)の特殊性
 デンタルチェア上で一次救命処置(BLS)を行う際には、若干工夫が必要である。まず、デンタルチェア上の患者を床面に移動させるのは困難であるため、水平位のデンタルチェアの背板の下に丸椅子を置いて、デンタルチェア上で胸骨圧迫することが勧められている。
 また、デンタルチェア上で水平位になった患者の咽頭部に異物が落下した場合、患者を急に座位に起こしてはいけないとされている。可能であれば、水平位の状態で医療機関に搬送する。
 異物が気管内または肺内であればすぐに除去する必要があるが、食道または胃内であれば、除去するかどうかは搬送先の担当医師の判断になる。

 





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