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2018年6月16日 (土)

Clinical 歯科診療における緊急時の対応 ②

続き:
1)「予備力」― 概念
 予備力は身体活動の制限のレベルに相当しており、疾患の重症度と対応している。循環器疾患においては、NYHA(New York Heart Association)の分類、呼吸器疾患ではHugh-Jonesの分類が予備力を反映していると考えられている。
 近年ではMETsという単位を用いた身体活動評価がよく用いられている。METsとは「Metabolic equivalents」の略、さまざまな運動におけるエネルギー消費量が安静時( 1 MET)の何倍に当たるかを示したものだ。
 METs 用いた身体活動能力の評価(参考文献1より引用)
2METs  トイレは1人で楽にできますか 着替えが1人で楽にできますか
2~4METs 炊事や掃除ができますか 自分でフトンをしけますか
        ぞうきんがけはできますか シャワーあびても平気ですか
         ラジオ体操しても平気ですか 健康な人と同じ速度で平地を100~200
       m 歩いても平気ですか 庭いじり(軽い草むしりなど)をしても平気
               ですか
4~7METs 1人で風呂に入れますか 
        健康な人と同じ速度で2階まで昇っても平気ですか
        軽い農作業(庭堀りなど)ができますか
        平地を急いで200m歩いても平気ですか
 手術の術前評価では、一般に 4 METs 以上であることが手術を受ける基準の一つになっている為、歯科診療にもこの基準を適用できると考えられる。4 METs 以上であることを評価するには、具体的には「健康な人と同じ速度で2階まで昇っても平気ですか」の質問が分かりやすく、歯科治療前の医療面接では、それを確認することは有用である。但し、下肢に障害があり、歩くことが不自由な患者、要介護高齢者で階段を昇ることのない患者に対しては、「1人で風呂に入れますか」という質問で代用できると考えられる。
2) 在宅療養患者の増加の意味
 高齢化に伴って在宅患者の増加が予測されている。身体活動評価による予備力の評価によると、歯科医院に歩いて通院し、さらに2階の診療室まで休まずに昇れる患者は、そのこと自体で予備力が十分であることを示しており、結果的に遇発症の発症率は低いと考える。
 しかし、要介護高齢者では予備力の評価が難しく、その上、予備力が非常に低い場合がある。そのため、潜在的に偶発症の発症率が高いということを認識しておく必要がある。
 近年、在宅療養患者に対して摂食・嚥下機能などの口腔機能に対するリハビリテーションの需要も増加している。口腔機能のリハビリテーションにおいても偶発症は発症する可能性があり、特に内視鏡による検査では、気道への影響という点では、一般の歯科治療よりも気道に関連した偶発症が発症しやすく、また重篤である可能性がある。
 これらの処置を含め、在宅歯科診療が今後さらに発展していくには、緊急時の対応を含めた全身管理の知識と手技の普及が重要である。
 




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