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2018年6月17日 (日)

Clinical 歯科診療における緊急時の対応 ③

続き:
2. 歯科診療における医療事故の実態は
 歯科診療における医療事故の実態は正確には把握していないため、その正確な発症率は不明、― 死亡例は非常に少ないと考えられる。しかし、死亡例が全く無いわけではなく、法医解剖の対象となった歯科診療関連死が報告されている。それによると2002年から2010年迄の9年間で、法医解剖の対象となった歯科診療関連死は24例であったことが報告。
 これらの年齢層の分布および態様別の件数がある(グラフ略)。また、死因別割合では、「心疾患」が最多(7例、29.9%)、次いで「窒息・低酸素脳症」(4例、16.7%)、「アナフィラキシー」(3例、12.5%)の件数が多かったこと、死亡までの時間では、「1時間以内」が10例(41.7%)と最も多かったことが報告されている。―― 例数が少ないため十分な分析はできないが、死因として「心疾患」が最多なので、高齢者の増加に伴って死亡例も増加傾向が予測できること、さらに、発症から比較的早期に死亡していることから、偶発症が発症した際、その早期の対応が重要だ。
3. 歯科診療における医療安全管理
 医療安全管理には、管理体制などさまざまな対応が求められるが、歯科診療に伴う偶発症の予防、早期発見、および適切な対応、という点に絞ると、「術前(初診時および歯科診療前)の患者の全身状態の評価」、「歯科診療中の患者の全身状態の評価」、「歯科診療における緊急時の対応」が求められる。
 この中で、「歯科診療における緊急時の対応」については、緊急時に患者の全身状態を評価し、全身状態に応じて適切に初動対応を行い、記録する、という一連の行為が必要である。以下にそれらについて説明を続ける。
4. 緊急時の患者の全身状態の評価
1) 患者の症状と訴え
 緊急時、―患者の状態急変時、先ず「症状と訴え」を評価する必要。次に「バイタルサイン」を評価、そして「患者の状態が急変した状況」および患者の「全身疾患」から、緊急対応が必要か如何かを判断する必要がある。
 緊急対応が必要な原因には、全身疾患(潜在的な疾患を含めて)の急性増悪、薬物等による反応、ストレス、精神科疾患の発作、気道閉鎖等である。
 しかし、心停止の状態(意識がなく、呼吸がないか異常な呼吸「死戦期呼吸」が認められる場合)、または、気道閉鎖の状態であれば、原因にかかわらず即座に一次救命処置(BLS)を行い、同時に緊急通報(119番通報)しないといけない。よって、「症状と訴え」では「患者の意識(反応)はあるか?」、「呼吸はしているか(異常な呼吸はしていないか)?」、「気道閉鎖はないか?」を評価する必要がある。
※患者の状態が急変時の症状と訴え
意識障害(意識消失、意識低下、見当識障害等)
呼吸異常(呼吸無、死戦期呼吸、気道閉鎖、呼吸困難等)
胸部不快感、胸部痛、動悸
顔面の紅潮
発語の異常・運動障害
悪心・嘔気・気分不良
頭痛
痙攣
※緊急に対応が必要な原因
<1>全身疾患の急性増悪
 心疾患(不正脈も)、脳血管障害、呼吸器疾患、糖尿病、感染症等
<2>薬物等による反応
 アナフィラキシー、ラテックスアレルギー、局所麻酔薬中毒等
<3>ストレスによる反応
 血管迷走神経反射、過換気症候群等
<4>精神科疾患の発作
 パニック発作等
<5>気道閉鎖
 補綴物、抜去歯等の異物による窒息
2) バイタルサイン
 「症状と訴え」を評価する際にバイタルサインもあわせて評価する。バイタルサインとは「生命徴候」という意味で「全身状態の代名詞」だ、患者の状態を評価するのにバイタルサインが最重要である。つまり患者の基本的な体の状態をわかり易く表現したもので、緊急時にすぐに対応が必要かどうかの判断の根拠。
 さらに、バイタルサインに異常がなければ様子をみても大丈夫だという根拠にもなる。バイタルサインの評価項目は表で示している(表―後で)。
 バイタルサインは「症状と訴え」と重なるが、順番が重要で、まず意識と呼吸の有無を評価する必要がある。
 意識と呼吸が有る場合は、生体情報モニタを用いて、脈拍と血圧を評価。
 最近では、パルスオキシメーターという機器が普及しており、それによって経皮的動脈血酸素飽和度(―、酸素飽和度)が測定できる。
 酸素飽和度は動脈血中の酸素供給を示したものであるが、呼吸の状態だけでなく循環の状態も評価できるため、非常に有用である。
 また、携帯用の小型のパルスオキシメーターがあり、これは在宅歯科治療では有用であり、その日の患者の状態(感染症の悪化など)について有益な情報を得ることができる。バイタルサインの異常から考えられる原因についても次回に示す。




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