« モラルハザード・モラルジレンマと信頼基盤の解体 ④ | トップページ | モラルハザード・モラルジレンマと信頼基盤の解体 ⑥ »

2018年6月26日 (火)

モラルハザード・モラルジレンマと信頼基盤の解体 ⑤

続き:
 今治市特区提案が特別扱いされ、加計隠しが当初から周到に行われ、新潟市提案・京都産業大学提案がアンフェアに扱われたことは、議事要旨より確認される以下の4点と朝日第2スクープ記事で明るみに出た要旨偽装や同じく朝日第3スクープ記事により明るみに出た2015/04/02、の加計学園関係者と柳瀬首相秘書官(当時}らとの面会記録の内容を踏まえるなら、疑いを挟む余地もない明らかなことであろう。
 第1は今治市提案の取扱いの異常さ。今治市が特区提案したのは2015/06/04、だが、翌5日には今治市へのWGヒアリングが実行され、8日には議事「国際水準の獣医学教育特区(今治市)」について文科省と農水省へのヒアリングが行われた。さらに半年後12月10日には今治市への2回目のヒアリング実行、しかし、1回目は「国際水準の獣医学教育特区」提案だったのに対し2回目は国家戦略特区の趣旨に沿うように <「国際観光・スポーツ拠点」の形成>提案に偏向され、その中に獣医学部新設も位置づけられた。この一連の異例な展開は同年4月2日の官邸訪問・柳瀬首相秘書官らとの面談を踏まえて設定されたと見てよいであろう。
 第3は、3回実施された関係省庁ヒアリングの内容の違いだ。2014/08、の1回目は新潟市の提案を受けて開催されたが、議事は「「獣医師系大学・学部の新設」で、質疑は新潟市提案を門前払いするかのような通り一篇のものでしかなかった。次いで、2015/06、の2回目は、議事「国際水準の獣医学教育特区(今治市)」が示すように、今治市提案が対象で、文科省は獣医学部一般について返答したが、質疑は今治提案を通すべく執拗であった。2016/09、の3回目は今治市提案の認定を前提にした質疑応答が中心であった。しかも、そのヒアリングの最後に、藤原豊内閣府地方創生推進事務局審議官から、翌週21日に「今治市分科会」(第1回)が開催されるので、同分科会にも出席してもらいたいとの発言有り。
 なお、1回目と2回目の間に「獣医師養成系大学・学部新設の解禁」とタイトルを付けて、2014/12、と2015/02、にも関係省庁ヒアリングが実施し、審議は獣医師の需給状況や動物タイプ別の獣医師数などが中心であったが、後者の質疑で私学での養成や獣医師養成の自由化への言及有り。
 他方、京都府・京都産業大学の特区提案に関連しての関係省庁ヒアリングは実施無し。この2点も、今治市提案(加計学園)が優先されていたことを示すものであろう。
 愛媛県・今治市と京都府・京都産業大学(京産大)の提案資料の違いである。今治市の場合、1回目ヒアリングでの審査資料は表形式A4横長1枚の提案書とPPTスライド3枚の添付資料だけ、2回目もPPTスライド1枚でしかない。
 他方、京都府・京産大の資料はA4判21頁で、独自調査に基づく多数の図表を示し、獣医学部新設4条件をすべて満たす内容であり、質疑でも「全て納得……全面的に賛同」「非常に説得的なお話」と高評価。この提案資料の違いは次の3点で重大だ。
①今治市の提案資料がごく簡略なものでその1つの理由は、前述の柳瀬首相秘書官や藤原内閣府審議官との面談で簡略な資料が望ましいと助言を受けていたからであろう。
②今治市提案は獣医学部新設4条件などをどのように充足するかについて具体的計画も根拠もまったく示していなかったから、特区WGが同提案を「可」と評価・判断することは不可能だったはず。
③それにもかかわらず、その後の展開では今治市・加計学園の提案が採択され、京産大の提案は却下になったが、その合理的根拠はまったく無いし、又、特区WGによって示されていない。
 以上に加えて、次の2点も重要。
 1つは、2016/09/16、開催の3回目の関係省庁ヒアリングでの藤原審議官の冒頭発言だ。「WGをスタートさせていただきます。文科省、農水省にお越しいただきまして、獣医学部の新設の問題ということでございます。…(略)…、これは去年の成長戦略の中で…(略)…政府決定をしておりまして、当時、本年度中に検討ということなので少し時期をもう越えておるのですが、…(略)…総理からもそういった提案課題について検討を深めようというお話もいただいております」。
 もう1つは、その1週間前、9月9日の第23回諮問会議で「獣医学部の新設」が「残された岩盤規制改革」の典型例として「加速的・集中的に進められることが確認されていたこと。
 以上より今治提案が特別扱いされ、当初から、「加計隠し」が周到に行われたこと、そして公平中立であるべき教育行政を著しく歪める身びいきでアンフェアな取扱いが行われたことも明らかであろう。そのうえ、問題はそれだけでとどまらなかったことが後に露わになったのだ。
 大学や学部の設置認可の可否について審査する大学設置・学校法人審議会(設置審)の審査の過程で2017/03、に提出された申請書に対し膨大な意見が付き、5月に再提出された申請書でも7項目に「是正意見」が付いた。
 是正意見はすべてクリアされなければ、認可されない。7項目も付くのは異例のことであるが、それでも最終的に認可されたのは、国家戦略特区案件(首相案件)だったからだと言われても仕方あるまい。



« モラルハザード・モラルジレンマと信頼基盤の解体 ④ | トップページ | モラルハザード・モラルジレンマと信頼基盤の解体 ⑥ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/413185/73751649

この記事へのトラックバック一覧です: モラルハザード・モラルジレンマと信頼基盤の解体 ⑤:

« モラルハザード・モラルジレンマと信頼基盤の解体 ④ | トップページ | モラルハザード・モラルジレンマと信頼基盤の解体 ⑥ »