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2018年7月 7日 (土)

Clinical tooth wear の病態と治療指針 ③

続き:
3) 酸蝕
 tooth wear の原因としてこれは極めて重要で、酸の主たる供給源は飲食物や胃酸である。従って患者の食生活習慣の急激な変化等により、極めて短期間に著しく進行してしまうこともある。また咬耗と同様に軽度の酸蝕は、日常生活の中で誰にでも生じている現象でもある。
 しかしながら、酸蝕症という診断を行うことは容易でなく、tooth wear が認められる患者で、その主たる原因が酸蝕であることが疑われる場合に、酸蝕症と診断するのが妥当と考えられる。
 日常的に摂取する様々な飲食物及び胃液の pHを示す図(略)がる。エナメル質の臨界 pH  (溶解が起きはじめる pH)は約 5.5 で、象牙質で5.8程度。多くの飲食物はエナメル質の臨界 pH よりも低く、歯の表面は日常的に脱灰される環境にある。
 胃酸のpH は1.0~2.0と飲食物よりも低く、極度に進行したtooth wear は胃食道逆流症(GERD:Gastro-esophageal reflux disease)によることが多いと考えられている。日本消化器病学会胃食道逆流症診断ガイドラインでは、食道外症状として、「歯牙酸食とGERDには関係があり、酸のGER が歯牙酸食の原因となる可能性があると考えられる」と記述している。
 近年北迫らは、15歳~89歳の患者1108名に対し、食生活に関する質問を行い、tooth wear の程度との関連を調べた。ここでは酸性食品を高頻度に摂取もしくは胃酸逆流が認められ、かつ初期のエナメル質の wear が1歯以上あれば酸蝕症ありと分類した。
 このような診断基準はこうした調査において国際的にも適用されているものである。この調査により、酸蝕ありと分類されたのは全被検者のうち26.1%で、上顎よりも下顎に多い傾向が認められた。これは飲食物が口底に滞留しやすいことを考えれば妥当な結果である。さらに胃液との関連が認められたのは被検者のうち3.5%であった。
 酸蝕ありと分類された被検者のうち、酸性飲料を週5日以上摂取する人は、15~39歳のグループで70%と高率で、年齢の上昇とともに少なくなる傾向がみられた。
 一方酸蝕ありの被検者のうち、酸性のフルーツを週5日以上摂取する人は15~39歳群では約17%であったが、60~89歳群では60%以上の高率であった。このように、若年者と高齢者とでは食習慣が異なり、酸蝕症の原因となる飲食物が異なっている。
 酸蝕歯は、歯の表面構造の消失、咬合面の陥凹、切縁の象牙質露出部の陥凹、切縁エナメル質の透明性増大、咬合接触のない部分での歯質欠損、修復物周囲のへこみ、上顎前歯口蓋側の平滑化といった特徴がみられる。特に GERD による酸蝕は上顎前歯の口蓋側の酸蝕との関連が深いと考えられており、特徴的な tooth wear を呈する。
 一方飲食物による酸蝕は、上顎前歯の唇面の酸蝕として現れることがおおい。これは口腔内で最初に接触する部位であることによる。また修復物周囲の歯質が消失して修復物が突出したような様相となるのも酸蝕症の特徴的な病態である。
 酸蝕症のリスクの高い患者で、すでにある程度進行したtooth wear を示す患者には、進行抑制のための対策が重要。胃酸に関連するところでは、GERD のほか、摂食障害やアルコール依存症は、アンケートでも適切な回答が得られにくいことや、特に上顎前歯の口蓋側の特異的な酸蝕の兆候に注意。
 酸性飲料は小児や若年者の間で習慣的に摂取されることが多くなっており、特に、口の中でためて飲むような習癖があると、下顎臼歯部に酸蝕が生じやすいといわれている。幼児が哺乳瓶う蝕でジュースを飲む習慣があると、哺乳瓶う蝕と同様、酸蝕のリスクは高まる。柑橘類の習慣的摂取では前歯唇面に酸蝕が生じやすい。このほかにも、ドライマウスの患者、ビタミンC製剤等の常用者、健康志向の強い人に多いベジタリアンや酸性の温泉水を常飲する飲泉者、酒やワインのテイスター、スポーツドリンクの常飲者、pH の管理されていないプールで日常的に泳ぐ人等、習慣的に歯が酸に接触する頻度が高い、もしくは時間が長い人には注意深い対応が必要である。
 




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