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2018年7月 8日 (日)

Clinical tooth wear の病態と治療指針 ④

続き:
4)アブフラクション
 前に述べた歯頸部の摩耗は、欠損の境界が不明瞭なことが多いが、歯冠側エナメル質が鋭縁となって、歯頸部の V 字型の欠損が形成されているものは、「くさび状欠損」として広く認識されてきた。この欠損は、理論的にアブフラクションと位置付けられ、これは咬合による応力が歯頸部に集中することで、歯頸部歯質に微小な亀裂が発生し、その後破折を繰り返しながら欠損増大していくことによる。アブフラクションも唇頬側に発生することが多いが舌側にも発生する。
 特に摩耗やアブフラクションにより歯頸部に生じた欠損で、明確なう蝕病巣が認められないものについては Non carious cervical legion ( NCCL : 非う蝕性歯頸部欠損)という呼び方が国際的に普及している。
 NCCL に関して、非破壊的に歯の内部構造が観察できる OCT を用いた近年の調査では、 NCCL のみられる歯では、咬耗、歯頸部のエナメル象牙境付近での亀裂、知覚過敏、欠損部表面歯質での脱灰の発現率が NCCL のない健全歯と比べて高いことが明らかになっている。
 小さな NCCL でも象牙質表面の脱灰は56%にみられ、大型の NCCL では80%以上に増加していた。 NCCL においてはその表面の歯質は健全歯質と同様な外観を呈することが多いが、多くの症例で表面の脱灰が生じていることは極めて興味深い。象牙質はエナメル質と比較すると明らかに耐酸性が低いので、短期間プラークが付着しただけでも、また酸性の飲食物が短時間接触しただけでも、脱灰が生じると考えられる。
 脱灰した歯質表面はその後の歯磨きによっても容易に消失し、より深い欠損へと進展し易い。
 また、亀裂、特に歯質側のエナメル象牙境に OCT 画像で白線として観察される亀裂は加齢とともに増加する傾向がみられた。このエナメル質の剥離の原因は明らかではないが加齢とともに咬耗も増加していると考えると、いわゆるアブフラクションという現象を裏付けるもの。特にエナメル象牙境に沿って亀裂が発生し、此の亀裂に沿ってエナメル質が破折して欠損拡大していくことが推測される。
 以上のように NCCL の多くは摩耗、アブフラクションおよび酸蝕が複合的に作用して形成される。
 知覚過敏は年齢の増加とともに減少していた。この傾向は、日常臨床の実感を裏付けるものであり、加齢とともに進行する象牙細管の封鎖や修復象牙質の形成などを考慮すれば、理論的にも納得できる結果である。
 さらに NCCL のない歯においても亀裂が認められることがあり、特に NCCL のない歯では、エナメル質の剥離の発生と知覚過敏症の発現との間には相関性が認められていることからすれば、知覚過敏症に対する処置法として咬合調整も選択肢として考えるべきである。
 
 





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