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2018年7月10日 (火)

Clinical tooth wear の病態と治療指針 ⑥

続き:
4. tooth wear の予防
  tooth wear は、歯が存在する限り経年的に生じるもの、それが軽度であれば特段の歯科的対応をすることはない。しかしながら、我々が経験したことのない超高齢社会で歯を維持していくことを考えると、tooth wear を進行させないような生活習慣を身につけることが重要で、若年者に対してもリスクの診断と改善による予防的なアプローチが必要。
 初診時には、個々の歯の診査、口腔衛生状態や咬合のチェックなどを行い、tooth wear という観点からの口腔内診査により、その原因となりうるファクターを改善するような対応が望まれている。食生活習慣に関する調査の例もある。
 予防的な療法としては、歯の耐酸性を高めること、酸蝕の生じにくい口腔内環境を維持すること。これはう蝕予防や初期う蝕の再石灰化療法と同様で、オフイスケアとホームケアの両方の面で対応する。
 特に積極的なう蝕予防として開発された 3DS と同様にカスタムトレーを作製して、フッ化物や歯の再石灰化に有効な成分を含むペーストを使用することもホームケアとして推奨したい。こうした療法は、患者に tooth wear について関心を高めることにも有効と思われる。
5. 歯磨きのタイミング
 tooth wear に関連して歯磨きのタイミングについて議論されることもある。従来から、歯の表面が酸性の飲食物により脱灰され、軟化した歯の表層が歯磨き等による摩耗で消失することで酸蝕が著しく進行することが指摘されている。
 そのため、食事のあとすぐに歯磨きを行うことに批判的で、食後ある程度時間が経過してから歯磨きを行うべきとする考え方がある。
 当教室では、酸性の飲料に歯を浸漬した後、唾液に一定時間接触させてから歯磨きを行い、エナメル質の消失量を測定、比較する研究を行った。
 その結果、ウシの歯のエナメル質を90秒間コーラに浸漬して、直後、口腔内で唾液に接触させて3分後、30分後そして60分後に歯磨きを行うと、時間経過と共にエナメル質の消失量は低下することが確認されている。
 しかしながら、30分あるいは60分後の歯磨き指導は現実的でないことに加えて多くの患者ではう蝕予防の方がより重要なことが多く、特に学童に対しては従来行われて「きた、「食べたら磨く」という基本的な考え方を推奨する。また歯磨剤の種類によっても同様の実験でエナメル質の消失量に大きな差が確認されている。
 特に酸蝕症に対する注意が必要な患者に対しては、30分経過してからの歯磨き指導が有効と思われるが、歯磨剤の選択を含めた、生活習慣の改善を第一に指導すべきである。
 tooth wear は、進行すると歯の喪失にもつながるもので、第3の歯科疾患として位置付けるべき病変だ。その原因は様々で、病態も一定ではない。う蝕診査、歯周病診査と同様、初診時に tooth wear についても診査を行い、リスク診断及び原因除去と改善による進行抑制と予防処置を行うべきである。
 





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