« 多国籍企業の特許戦略 | トップページ | 命を作る科学技術の制御という課題 ① »

2018年7月17日 (火)

規制を免れようとする動きが活発

続き:
 すでに述べたが、米ケイリクス社がゲノム編集に開発した小麦に就いて米国農務省は、「ゲノム編集技術で開発された作物は規制しない」と発表。その理由として、この技術が従来の育種技術で開発された作物と区別できないからだ、と述べている。しかし、これまで述べてきたように、ゲノム編集された作物は、むしろ遺伝子組み換え作物と変わらないのであり、この論理は規制しないための言い訳に過ぎない。
 この米国の動きと軌を一にして、世界的に規制を行わない方向への動きが強まっている。オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)が2018年3月に、新しいバイオテクノロジーに関する議論を行った際の議事録を公表した。
 そこでも、ゲノム編集など最新技術について規制しない意向が示されている。まだ正式に決定でなないものの、米国に続き両国が規制を行わないことを決定すれば、世界的に規制を行わない流れが加速しそうである。
 世界的に規制を免れようとする動きが強まる中で、欧州の科学者団体である「社会と環境への責任をもつ欧州科学者ネットワーク(ENSSER)」が、60人を超える科学者の署名とともに、ゲノム編集など新しいバイオテクノロジーを応用した食品に対して警鐘を鳴らす声明を発表した。
 この声明では、このような食品は、食の安全面で問題があると同時に、生態系に悪影響が出る可能性有り、それで、厳格に規制をすべきであると述べ、ている。特にゲノム編集では、目的とする遺伝子以外のDNAも切断してしまう「オフターゲット」を防ぐことは困難であり、それが時には、生命体にとって大事な遺伝子の働きを破壊してしまう可能性があると指摘している。
 また、そのオフターゲットが予想外の毒性やアレルギーを引き起こす可能性があること、さらにゲノム編集は「バイオテロ」をもたらす可能性があり、ゲノム編集を応用した遺伝子ドライブは、生態系を破壊する危険性が高いとして、遺伝子組み換え技術と同様の厳格な規制を行うべきだと指摘した。
 加えて、すべての消費者や農家が選択できるように、トレーサビリティと食品表示を義務づけるべきだと提言している。
 日本はどうだろうか。現在、政府はゲノム編集への規制に関して見解を示していない。
 「申請が出された時点で考える」という姿勢だ。しかし、生物多様性条約カルタヘナ議定書に関しては次のような解釈を述べている。同議定書では、通常よく言われる遺伝子操作生物 (GMO) ではなく、生命操作生物 (LMO) という考え方をとっている。その改変された生物であるLMO について同議定書は次のように定義している。「『改変された生物』とは、モダンバイオテクノロジーの応用によって得られる遺伝素材の新たな組み合わせを有する生物をいう」。
 ゲノム編集は遺伝子の働きを壊すだけであれば、遺伝素材の新たな組み合わせにあたらないのでは、と解釈しているようだ。
 このままでは、日本もまた規制を行わない可能性がある。
 このように政府レベルでは、世界的に規制を免れようとする力が働いている。これでは、環境も食の安全も守ることが出来ない。





« 多国籍企業の特許戦略 | トップページ | 命を作る科学技術の制御という課題 ① »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/413185/73873126

この記事へのトラックバック一覧です: 規制を免れようとする動きが活発:

« 多国籍企業の特許戦略 | トップページ | 命を作る科学技術の制御という課題 ① »