« 遺伝子組み換えとゲノム編集 | トップページ | 遺伝子ドライブ技術への批判が広がる »

2018年7月12日 (木)

開発が進むゲノム操作食品

続き:
 この技術の応用が進んでいるのが作物などの食品分野である。米国では2015年に除草剤耐性ナタネの栽培が始まる。スルホニルウレア(SU)系除草剤に耐性を持たせた作物で、サイアス社が開発。米国ではゲノム編集には規制が設定されていないため、すぐに栽培がはじまり、既に市場に出ている。
 この4月5日に米国農務省は繊維分を増やすようゲノム編集で改造された小麦についても、遺伝子組み換えではないので規制の必要は無く、そのため評価の必要も無い、と発表して栽培を認めた。
 このゲノム編集小麦は、米ケイリクス社が開発したもので、同社では2016年に既に規制は必要ないとして栽培が認められたウドンコ病抵抗性小麦に続く2種類目のゲノム編集小麦である。他にもトランス脂肪酸を含まない大豆、変色しないマッシュルーム、ソラニンを減らしたジャガイモ、アクリルアミド低減ジャガイモ、干ばつ耐性トウモロコシ、収量増小麦等で開発が進行している。
 日本では農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が、「シンク能改変イネ」を開発、2017年から5ヵ年計画で栽培試験を行っている。この稲は、籾数を増やし、収量増加をもたらすことが期待されている。さらに2018年5月1日に、農研機構は、神戸大学の研究者らによる「ターゲット AID 」という新たなゲノム編集技術で開発した稲の栽培実験計画書を発表。
 ターゲット AID とは、酵素を用いてDNAを切断するのではなく、シトシン塩基をチミン塩基に置き換えて遺伝子の働きを止める方法だとされている。いずれにしろ日本は、稲の開発を中心に研究・開発が進められている。
 世界的に動物での開発が盛んである。特に進んでいるのがミオスタチン遺伝子(成長制御する遺伝子)を壊す操作であるが、他にも、耐病性の豚、角のない乳牛や卵アレルギーを引き起こさない鶏なども開発されている。
 ゲノム編集は現在、遺伝子の働きを止める「ノックアウト」技術として用いられている。しかし、ノックアウトして壊した遺伝子の代わりに新たな遺伝子導入する「ノックイン」も可能である。そうすると、これまでの遺伝子組み換え技術ではできなかった、正確な組み換えが可能になる。これまでの遺伝子組み換え技術では、ある生物にほかの生物の遺伝子を導入しても、その遺伝子がどこに入るか指定できず、しかもその生物のほかの遺伝子は同時に働いているため、正確な遺伝子組み換えではなかった。その正確な組み換えができるようになる。すでにそこを睨んでの開発競争が激化している。
 日本政府もこの技術応用や新食品開発に積極的である。内閣府が進める「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の中に「次世代農林水産業創造技術(アグリイノベーション創出)」の取り組みがある。
 日本の農林水産技術を戦略的に強化していくのが狙いであるが、力点は、新技術開発を通して企業の技術力を強化しようとするものである。
 強化の柱はイノベーションであり、知的所有権を取得し、最終的には高度化された農産物を販売しようとする戦略といえる。この次世代農林水産業創造技術の柱となる「新たな育種技術の確立」として最も力を入れているのが、ゲノム編集による新たな作物や動物の開発である。





« 遺伝子組み換えとゲノム編集 | トップページ | 遺伝子ドライブ技術への批判が広がる »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/413185/73845406

この記事へのトラックバック一覧です: 開発が進むゲノム操作食品:

« 遺伝子組み換えとゲノム編集 | トップページ | 遺伝子ドライブ技術への批判が広がる »