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2018年7月26日 (木)

命を作る科学技術の制御という課題 ⑨

続き:
 香川のまとめによると、この会議がまとめた「国際サミット声明」では、生殖系列細胞へのゲノム編集の問題について六点があげられている。
① オフターゲットやモザイクといった技術上の問題
② 遺伝子改変の有害な結果を予測する難しさ
③ 個人のみならず将来の世代への影響を考える義務
④ 人間集団にいったん導入した改変を元に戻すのは難しいという事実
⑤ 恒久的エンハンスメントによる差別や強制
⑥ 人間の進化を意図的に変更することについての道徳的、倫理的検討。
 この③④⑤⑥を見ると、確かに生殖系列細胞へのゲノム編集は「人間改造」に至るという重大な問題があることが示されてはいる。
 この点で、日本の生命倫理専門調査会の「『ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方』見直し等に係るタスク・フォース 報告書(第1次報告)」によりはましである。
 だが、香川はこの「声明」は生殖系列細胞へのゲノム編集に歯止めをかける意志を示したものとは見なせないという。
 この「声明」には、「科学的知識と社会的見解は進化するのであるから、ヒト生殖系列細胞の編集の臨床利用は定期的に見直されるべきである」との留保がついている。
 この留保は、1975年のアシロマ会議を思い起こさせると香川は論じている。ボルティモアとバーグは2016年4月の『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙に「人類を変える前に一時停止ボタンを押そう」という記事を掲載し、そこでアシロマ会議に言及し、「研究に従事していた科学者たちは安全性の問題 (safety issues) が評価できるようになるまでモラトリアムをおくことを受け入れた」とし、今回もアシロマ会議方式をたどることを示唆している。


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