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2018年7月19日 (木)

命を作る科学技術の制御という課題 ②

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 2016年にはゲノム編集について紹介する多くの書物が刊行された。NHK「ゲノム編集」取材班による『ゲノム編集の衝撃―「神の領域」に迫るテクノロジー』(NHK出版)には、iPS細胞の発明によって2012年にノーベル医学賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授が「序文」を寄せ、こう述べている。
 ゲノム編集は、iPS細胞に引けをとらない、大きな可能性のある技術です。
 ただ、どんな科学技術でも、よい側面とよくない側面があります。諸刃の剣とでも言いましょうか。このゲノム編集というすばらしい技術のよい面だけを伸ばしたら、人類はますます幸福になることができると考えられます。しかし、よくない面を伸ばしてしまったら、後悔することにもなりかねません。
 ほんの5年前まで SF だと思われていた、人間の設計図を書き換えることが可能になりました。この新しい技術をどう使えばいいのか、科学者だけの議論では十分ではありません。科学者に加えて、生命倫理の研究者や一般の方々も含めた広い議論が必要だとかんがえています。
 医学者である山中氏がとくに注目しているのは、人間(ヒト)の遺伝子の改変だ。既に2015年以来、中国や米国では、ヒトの受精卵のゲノム編集実験が試みられている。そこで、生殖系列細胞(受精卵や生殖細胞)にゲノム編集を行なう基礎研究を認めるかどうかという問題が緊急の検討課題となっている。
 山中伸弥氏が「よくない面を伸ばしてしまったら、後悔することにもなりかねません」というのはどのような場合か。山中氏だけでなく、ヒトを対象としたゲノム編集の利用を考えている研究者、再生医療や遺伝子治療の研究に携わっている研究者には、ぜひどこがどう危ういのかを明らかにしてほしいところである。また、先端的な生命科学の研究の倫理問題に関心をもつ学者やジャーナリストも、この問題の解きほぐしを進めるべきときである。
 筆者(島薗)も、山中伸弥氏との話し合いを行ったが、山中伸弥氏が所属する京都大学再生医療研究所の上廣倫理研究部門では今のところこうした問題に取り組む気配は見えない。日本学術会議は2017年9月に、「提言 我が国の医学・医療領域におけるゲノム編集技術のあり方」を公表している。
 これは問題の理解の助けになるものだが、日本学術会議のシンポジウムを踏まえ「学術会議叢書」に寄稿した拙稿でも述べたように、倫理面での考察は十分ではない。





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