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2018年7月15日 (日)

ゲノム編集の問題点

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 ゲノム編集には様々な問題点がある。一つは、ゲノム編集は、遺伝子組み換え技術と基本的に変わりない点だ。これについては、『エコロジスト』誌が指摘している。例えば、これまで遺伝子組み換え技術で指摘されてきた問題点と共通した点に、プラスミドの問題。ゲノム編集を容易にした1つの要因に、プラスミド(核外遺伝子)を用いた事があげられる。
 プラスミドとは、細胞間を自由自在に出入りできる遺伝子で、遺伝子組み換え技術でおなじみのものであり、組み換えが容易になったのもプラスミドを用いたからだった。そのプラスミドにカリフラワー・モザイクウイルス35Sプロモーター遺伝子が導入されている。プロモーターとは、遺伝子を発現する役割の遺伝子だ。さらにゲノム編集がうまくいったかどうかを見分ける為の抗生物質耐性遺伝子やクラゲの発光遺伝子等も一緒に用いられている。これがガイドRNAや制限酵素遺伝子をつないでおり、実に多くの遺伝子が用いられている。
 この中で特に問題なのが、抗生物質耐性遺伝子とカリフラワー・モザイクウイルス35Sプロモーターの存在である。抗生物質耐性遺伝子は、食品として食べた人の腸内で抗生物質耐性菌が出来ることが指摘されてきた。カリフラワー・モザイクウイルス35Sプロモーターでは、米国・生命科学資源プロジェクトの科学者ジョナサン・レイサムが『インデペンデント・サイエンス・ニュース』誌でその問題点を指摘している。「ゲノム編集技術は精密に制御されている」という神話があるが、それはありえないと批判した上で、カリフラワー・モザイクウイルス35Sプロモーターは遺伝子組み換え技術で、一般的に用いられているが、最初は考えられてもいなかった。小さなRNAを大量に生成することが、後に明らかになった、と指摘している。これはゲノム編集でも起きうる事である。
 そして、もう1つ大きな問題になっているのが、目的とする遺伝子以外の遺伝子を壊す「オフターゲット」の危険性だ。これを避けることは不可能といえる。オランダ・デルフト工科大学の研究チームが、「オフターゲット」が確実に起きることを示し、そのことを組み込んだ新たな数式モデルを提案した。同研究チームが、オフターゲットが確実に起きるとした根拠は、CRISPR-Cas9が細菌のもつウイルスからの防御システムを利用しているところにあると指摘。
 ウイルスは自己防衛の仕組みとしてDNAに変化を起こすが、この防衛システムでは、その変化に対応するためDNAが完全に一致しなくても切断するからだ、と説明している。そのため研究者は、そうしたエラーが起きる確率を組み込んだ数式モデルが必要だとして、新たなモデルを提案している。
 また、米国コロンビア大学の研究チームがゲノム編集技術を用いて行った動物実験で、多数の意図しない突然変異が起きていることが明らかになった。研究に取り組んだのは、スティーブン・ツァンらで、すべての塩基配列(DNAの文字配列)を確定させた二匹のマウスで、CRISPR-Cas9を用いてゲノム編集を行い、オフターゲットと呼ばれる、ターゲットとした遺伝子以外のすべての突然変異の個所を探した。その結果、単一の塩基での突然変異1500か所以上、大きい規模での削除と挿入が100か所以上見つかったのである。
 従来、潜在的なオフターゲットを探すため用いられている方法としては、コンピュータ・アルゴリズムによって、影響を受ける可能性が強い領域を特定して行ったきた。この実験のように全ゲノムを用いては行われてこなかった。従来の方法は予測できなかった多さであり、その深刻さが浮かび出る形となった。
 最もオフターゲットが起き易いのは、一つの遺伝子で複数のタンパク質を作るケースへの介入である。以前、一つの遺伝子は一つのタンパク質に対応していると考えられていた。しかし現在は、一つの遺伝子で複数のタンパク質が作られていることが明らかになっている。そのため標的とした遺伝子を破壊した場合に、複数の機能が壊れてしまうこともありうる。ゲノム編集は、このような生命の複雑さに対応出来ないため、何が起きるのかわからない。





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