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2018年7月16日 (月)

多国籍企業の特許戦略

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 遺伝子組み換え作物を開発したモンサント社などバイオメジャーと呼ばれる多国籍企業は、その開発力で世界の種子市場を独占してきた。その種子支配をもたらした源泉こそ、特許である。特許を制するものが種子を支配し、種子を支配するものが食料を支配してきた。いま世界中で栽培される大豆の約80%がサンモント社の種子であり、技術独占が農家を企業の奴隷状態に追い込み、世界中の食料を支配できることを示したのである。
 その多国籍企業間で合併・買収が相次いでいる。2016/09/14、ドイツのバイエル社が、世界最大の種子メーカーのモンサント社を買収すると発表した。農薬のバイエル、種子のモンサントの両社が合わさり、それぞれの分野で世界のシェアの約30%を占める巨大企業が誕生することになる。しかも、サンモント社は米国で強く、バイエル社はヨーロッパで強いため、地域的にはこの買収は効果が大なると見る。
 もうひとつの巨大合併が、中国化工集団公司による世界最大の農薬企業シンジェンタ社買収である。中国のこの国営企業は、2011年にはイスラエルの農業関連企業MAI社を買収している。MAI社の現在名はアダマ社である。中国企業によるシンジェンタ社買収は、シンジェンタ社から見ると、巨大化する中国市場をターゲットにでき、中国企業から見ると、世界に打って出ることが出来る、という思惑がある。
 さらには2015年12月には、米デュポン社と米ダウ・ケミカル社が経営統合を発表し、2016/07/20、に正式に合意した。これは米国の巨大化学企業同士の経営統合である。これらの合併により、100億ドルを超える売り上げの3つの巨大企業が出そろい、これにより種子・農薬のアグリビジネスは、3社による世界規模での寡占状態を形成することになった。
 このメガ合併と共に活発化しそうなのが、特許権争いである。ゲノム編集は、遺伝子組み社がは換え技術に取って代わりつつあり、特許権の行方が注目されてきた。2016/09/22、サンモント社はブロード研究所と、同研究所が持つCRISPR-Cas9 の特許権の独占的使用に関して合意に達した。
 これによりゲノム編集を用いた作物の開発に、モンサント社が本格的に参戦するとともに、特許紛争が激化することになった。
 CRISPR-Cas9 をめぐる特許紛争は、これまでカリフォルニア大学対ブロード研究所の争いで展開されてきた。最初にCRISPR-Cas9 が大腸菌で働くことを確認して、初めてこのシステムの有効性を示す論文で発表したには、カリフォルニア大学バークレイ校のジェニファー・ダウドナとスウェーデン・ウメオ大学のエマニュエル・シャルパンティエのコンビだった。ジェニファー・ダウドナは、後にカリブー・バイオサイエンス社を設立した。このカリブー・バイオサイエンス社は、デュポン社と組んで作物の開発を進めてきた。
 これに対して、ブロード研究所のフェン・チャンは、CRISPR-Cas9 が初めて哺乳類の細胞の中で働くことを発表した。このブロード研究所は、マサチューセッツ工科大学とハーバード大学の研究者が2004年に設立した研究所である。結局、特許権がブロード研究所に認められたため、カリフォルニア大学が訴え紛争化してきた。この特許紛争が、モンサント社対デュポン社という多国籍企業間の争いの様相になったのである。
 この特許戦争は最終的にブロード研究所の勝となり、2017年春に最終的な決着を見たが、しかし、CRISPR-Cas9 の関連特許は2014年までに300を超える多数に達し、複雑な様相を呈しているのだ。
 これまでも特許を制するものが、種子を制してきた。遺伝子組み換え作物と同様に、ゲノム編集技術でいま、その戦争が起きているのである。
 このゲノム編集での作物開発について、第三世界の人々のネットワークであるETCグループは、遺伝子組み換え作物と同じ問題をもたらすとして、批判している。
 「この技術は、商業利用での強力な武器になり、農業に利用された際には農民の権利や食料主権が奪われる。また、この技術に与えられる知的所有権は、大半がバイテク企業に与えられており、これは種子支配をもたらし、食糧安全保障を奪う」と。





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