« Clinical がん歯科支持療法 ⑤ | トップページ | Clinical がん歯科支持療法 ⑦ »

2018年8月 6日 (月)

Clinical がん歯科支持療法 ⑥

続き:
4. 実際の具体例
1) 全身麻酔手術を受けた場合
(1) 特徴
   全身麻酔では、人工呼吸器を使用するため、声門部にチューブが留置される。手術が終わり、抜管した後もチューブが挿入されていた影響で、数日間は嗄声や咽頭違和感が残り、誤嚥しやすい。特に、高齢者は、喉頭や頸の周囲の筋力低下により嚥下機能が減弱しており、元から誤嚥リスクが高い。
 口が汚れている(細菌が多い)と、術中から術後にかけてその細菌が声門を越え、気管支や肺内に入り込み、術後肺炎の原因になりうる。
 また、手術直後は臥床している上、絶飲食で口の周囲組織を動かすことが少ないため、ドライマウス状態になりやすい。口腔咽頭、食道の手術の場合は1週間程度、消化管手術の場合は術後3~4日間程度の絶飲食期間が設けられている。
 この期間は、自浄作用が減弱して細菌の過増殖が進むため、医療者によるケア介助やセルフケアが必要となる。
 体表部や四肢(乳がん、整形外科領域)、呼吸器(肺がん)の手術では、術後絶食期間は短く、手術翌日から経口摂取が再開する。経口摂取の再開後は、自浄作用を含めた一連の口腔機能が回復してくるため、比較的肺炎リスクは低いと考えて良い。
(2) ポイント
  全身麻酔手術では、術後肺炎の予防が期待されている。特に、75歳以上の高齢者でリスクが高くなるため、術前にクリーニングを行うだけでなく、義歯の適合調整や管理方法を確認し、術後速やかに経口摂取が再開できるような支援を行う。
◇ 対応時期 : 予防的な対応が必須であるため、術前からの介入が強く推奨される。手術日に向けた短期間の介入となることも多く、手術をする病院・診療科からの依頼時期によっては、直近1回の介入のみで対応しなければならない場合もある。そのときは、術後肺炎予防のため口腔内のクリーニングを優先する。
(3) 説明例
   「全身麻酔手術の前にクリーニングして、肺炎のリスクを減らしましょう。クリーニングしてきれいになった口の中は、手術までの間は、セルフケアで維持するようにしてください。汚れを除去するため、歯は歯ブラシで磨き、舌や上あご、頬粘膜はスポンジブラシで拭うようにしましょう。義歯のお手入れも忘れずに。手術の後、食事が始まるまでの期間は口が乾きやすく、汚れやすいので、特に注意をしてセルフケアするように心がけてください。食事が再開して、その他の日常生活が手術前に近い状態に戻れば、ひと段落です」。
2) 抗がん剤治療を受ける場合
(1) 特徴
   抗がん剤投与の1サイクルの治療期間は、およそ4週間であり、これを複数回繰り返す。がんの種類や治療目的(根治治療か、症状緩和か)により、4回、6回などと最大投与回数が決まっている場合と、効果がある限り、数十回以上も継続して投与される場合がある(長期間、4週間程度のサイクルを繰り返す)。
 サイクル間では、投与後2~3週間目(8~21日頃)が骨髄抑制期にあたり、白血球や血小板の数が減少した易感染、易出血状態であり、侵襲的な歯科処置を避けるようにしている。
 しかし、根尖病巣の増悪や歯周炎の急発が起こりやすいのもこの時期である。非侵襲的な対応が原則であり、安易に切開・排膿処置を行うべきではない。通常は、抗菌薬投与による消炎が適応となるため、
 がん治療実施病院の担当医へ歯性感染症について報告(診療情報提供書の作成)を行う。
(2) ポイント
   治療サイクルを繰り返す理由は、抗がん剤による毒性から回復する期間を設けているため。具体的には、貧血、白血球数や血小板数減少等の骨髄抑制期はあるが、3~4週間で回復するため、歯科処置が不可能ということではない。
 骨髄機能が回復してくる時期の限られた期間ではあるが、歯科治療は可能である。
◇ 対応時期 : 理想的には、治療開始前に介入することができれば、歯性感染源の評価と対処ができる。ただし、既往に症状がない不顕性感染源に関しては、患者QOLを考慮して治療の可否を判断しなければならない。
 全く無症状である場合、歯科処置を行うことが痛みを誘発し、QOLを低下させる処置となる可能性がある。あえて処置を行わない経過観察という選択肢も十分考えられる。
(3) 説明例
   「抗がん剤治療を受けると、一般的に免疫力が低下して感染症にかかりやすくなります。特に、口の中は細菌が多いので、意識して口の中をきれいに維持する必要があります。そのために、毎日自分でもお口のケアをしましょう。歯だけでなく、唇の裏側や舌の脇、頬の内側に、口内炎がないか注意してください。痛みや症状が1週間以上続く場合は、教えてください」。
 




« Clinical がん歯科支持療法 ⑤ | トップページ | Clinical がん歯科支持療法 ⑦ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/413185/73986379

この記事へのトラックバック一覧です: Clinical がん歯科支持療法 ⑥:

« Clinical がん歯科支持療法 ⑤ | トップページ | Clinical がん歯科支持療法 ⑦ »