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2018年9月14日 (金)

「軍事機密費」 ②―①

続き:
闇の政治資金――幻の「議会答弁資料」が物語るもの
 私(渡辺)が求め続けたのは、この供述を裏付ける公文書だった。どこかにあるのだろうと探し続けた。防衛省防衛研究所でようやく見つけたのが、「陸軍省」と印刷された用紙に記された「議会答弁資料」と題を付けた文書である。
 国会での質問を想定した答弁案だ。日付はないが、敗戦から数ヵ月以内に作られたものと推定できる。
 文書は2つの内容に分かれている。
 <1>には「機密費」との題がある。「東条大将が莫大なる機密費を使ったというが真相は」との質問想定した答弁案である。
 「書類焼却のため絶対確実とはいえないが」と前置きしたうえで、「東条首相在任期間中にに陸軍から融通した機密費の総額1800万円で、辞職後に200万円ほどが返納された」と記されている。
 東条が政権の座にあったのは、1941年10月~1944年7月迄の34カ月だ。書記官長が語っていた機密費の流用、上納が、その後の東条内閣でも引き続いていたことが確認できる。
 陸軍から上納され東条内閣が実際に使ったと考えられる1600万円、今日なら140億円程度に相当する。在任期間で単純計算すると毎月4億円になる。書記官長の証言からすると、海軍からも同額が上納されていたと考えられ、東条が実際に手にした総額はさらに膨らんでいたことになる。
 何に使ったのだろうとの思いがする巨額さである。
 莫大な資金に裏付けられた東条の政治力について、近衛文麿の娘婿である細川護貞の日記の1944/10/14 に、こんな記述がある。
 東条が政権の座を去った3カ月後に近衛、吉田茂、鳩山一郎らが集まり雑談した記録である。
 「宮内省奥向に東条礼讃者あるは附け届けが極めて巧妙なりし為なりと話出で、例へば、秩父、高松両殿下に自動車を秘かに献上し、枢密顧問官には会毎に食物、衣類等の御土産あり、中には各顧問官夫々のイニシアル入りの万年筆等も交りありたりと。
 又牧野伯の所には、常に今も尚贈り物ある由。鳩山氏は東条の持てる金は16億円なりと言ひたる所、公は、夫れは支那に於てさう言ひ居れり、主として阿片の密売による利益なりと。共謀者の名前迄あげられたり。余も何かの会合で、10億の政治資金を持てりと聞けり。
 過日の海軍懇談会の折も、昨今の東条の金遣ひの荒きことを矢牧大佐語られたり。或は多少の誇張もあらんも、多額の金を持参し居るならん」
 「牧野伯」とは政界の重鎮の牧野伸顕、「公」とは近衛のことである。





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