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2018年10月16日 (火)

資本がメディアを先導する ②

続き:
 先日開催されたシンポジウム「ネット右翼とは何か」(2018/06/30)では、7万人を対象とした社会調査を行った永吉希久子が、全体の1.7%の人びとがネット右翼的な書き込みをし、3%の人びとがオンラインで排外主義的な発言(ヘイトスピーチ)を流しているとの調査結果を報告した。
 そして上記の傾向のある人は、雑誌やブログなどを情報源にしていることに統計的有意の値が出ている。(「ネット右翼とは誰か ネット右翼の規定要因」)。
 以上から明らかであるのは、過激なネット右翼的な書き込みも排外主義的な書き込みも、決して大衆による一般的な行動とは思えない。
 むしろ一部の「シリアスなファン」によるものと捉えるべきなのだ。
 それにもかかわらず、私たちが右派言論を「大衆が支持している思想」のように感じるのは何故か。こちらも調査が進んでいる。2016年の米大統領選における選挙関連のツイートは、2割が自動で書き込みを行うプログラム(bot)から発信されている。(『朝日新聞デジタル』2018/04/15)。
 日本の2014年選挙でも同様に、「反安倍政権」批判するツイートのうち83.2%がリツイートまたは類似のツイートであった。他方、オリジナルの投稿は16.8%しかない。即ち、日本の右派言論も自動プログラムが拡散に使われているのだ。ここに IT. で差別発言をよく目にする現象のからくりがある。
 そして、この「メディアを通してよく目にする」という物量作戦は、やはり人びとの意識変化に働きかけることになる。例えば、少年犯罪を戦後減り続けているにもかかわらず、1990年代に少年犯罪を扱う記事やワイドショーが犯罪統計とは反比例するかたちで増加したことによって、事実に反する体感治安の悪化を招いたことは犯罪社会学では定番の話だ。
 実際にシリアスで熱心な少数のネット右翼は、雑誌やブログを情報源としていることが分かっている。量的に言えば、『朝日新聞』による「慰安婦」問題検証の記事よりも、産経新聞などによる「慰安婦」の存在を否定する新聞や雑誌記事の方が何倍も多いのだ。
 以上のように、IT. 文化は、アナログ時代の右派論壇のプラットフォームと非常に親和性を持っている。
 そして、IT. 文化でも雑誌やブログ等既存の右派論壇の兵站にして拡大・拡散を続けている。そして、自動プログラムを使うことによって大衆が支持しているかのように見せかける方法をとっている。しかし、他方でそれに影響を受けた人びとの活動は、右派論壇の思惑以上のものになっているかもしれない。
 例えば、弁護士に対する大量の懲戒請求を求めた2017年9月以降の動きもそうだろう。
 ブログ「余命三年時事日記」に煽られたネット民が、朝鮮学校裁判関連の弁護士に懲戒請求を大量に送った事件だが、逆に訴訟され、返り討ちにあっている。→無関係な弁護士にまで懲戒請求を送るなど、事実を確認しない「雑なネット右翼」が拡がっている印象。





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