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2018年10月 4日 (木)

Science ~漢方薬の EBM の表と裏~ ④⑤

続き:
4. 漢方薬の EBM の表と裏
 口腔乾燥症に対し、漢方療法がどのような経時的効果が認められるのかを塩酸セビメリン(サリグレン)投与症例と比較検討した報告がある。
 漢方薬を投薬し6か月間継続投与した15例を対象とした。漢方薬別唾液分泌増加量は、白虎加人参湯が初診時 3.0ml/6か月後 3.66ml、麦門冬湯が初診時2.5ml/6か月後 3.75ml、五苓散が初診時4.75ml/6か月後 5.25mlであった。
 平均唾液分泌増加量は、白虎加人参湯が o.67ml、麦門冬湯が1.25ml、五苓散が0.5mlであった。
 平均自覚症状改善度は、白虎加人参湯が75.8%、麦門冬湯が62.5%、五苓散が70.0%であった。
 塩酸セビメリン投与症例の平均唾液分泌増加量は3.75mlで、平均自覚症状改善度は、32.5%であった。平均唾液分泌量は塩酸セビメリンが最も効果があり、他の漢方薬の間に有意差を認めた。
 一方で平均自覚症状改善度は漢方薬が塩酸セビメリンより改善度が有意に高かった。
しかし、麦門冬湯は他の西洋薬と比較して効果が減少するという報告もある。また、口腔乾燥症を主訴とする患者を対象に実施した麦門冬湯と塩酸セビメリン、H2ブロッカーであるニザチジンを用いた検討では、麦門冬湯では唾液量の有意な増加は認められず自覚症状の改善が共に認められたという報告もある。
 つまり、このように対象となる患者によって治療効果は一定でないと報告している。さらに口腔乾燥症治療においては唾液を分泌することのみを目的にしても患者の満足度は得られないこともあり、患者が何を求めているかによって治療方法に考慮する必要であるとまとめている。これらの論文は、口腔乾燥症に対する漢方薬治療の効果を西洋医学と漢方医学の面から捉えている。口腔乾燥症に対する漢方薬のエビデンスから白虎加人参湯、麦門冬湯、捕中益気湯、人参養生湯の4種の例示があるが、この中には有効性が明白な五苓散はあげられていない。また、口内炎に対して歯科開業医、大学病院で処方されている黄連解毒湯は、口内炎に対する漢方薬のエビデンスの中では列挙されていない。
 つまり、西洋医学の発想だけでは漢方薬を評価できないことやこれまでの医療現場での漢方薬物療法が学術論文誌で掲載されていないことを示唆していると考えている。
 一方、日本東洋医学会による「漢方治療エビデンスレポート 2013 -402の RCT- 」を用いて、アウトカム評価項目としてどのような QOL 値測定尺度が採用されているかを文献調査したところ、402件の RCT中、QOL 測定尺度を採用している文献は23件(6%)とわずかであったの報告がある。そのため、医科では漢方医学の視点を取り入れた質の高い臨床試験を推進している。
5. まとめ
 ここでは、歯科医師として漢方処方の必要な知識と漢方薬の EBM を多角的に考えてみた。西洋医学教育を受けてきた歯科医師には漢方医学の理解に苦しむことも少なくなく、かっての医師も同じであった。現在も医学界では漢方薬の選択方法は議論されており、今後、医学部同様に歯学部漢方医学教育が充実していくことにより、現代医療に対応した漢方薬の選択方法が確立していくと思われる。
 2015年には日本歯科医学会から全国29の歯科大学に「歯科漢方医学教育カリキュラム案」が発信され、さらに、日本歯科薬物療法学会は「歯科口腔外科領域における漢方治療のエビデンス」をまとめた。
 また、2016年度歯学教育モデルコアカリキュラム案に「和漢薬を含む」という語句が記載された。急速に口腔疾患への漢方医学、歯科医療や歯科医学教育の現場に普及していき、歯科医学、歯科医療の漢方の扉はさらに開くだろう。
 





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