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2018年11月 6日 (火)

Clinical 口腔診療に重要な関連知識 ⑥

続き

6. 異物誤嚥

 歯科診療時だけでなく、日常生活に於いても乳幼児や高齢者の異物誤嚥に遭遇することは、それほど稀ではない。歯科診療に関係して誤嚥する異物としては、歯(破片も含む)、クラウン、ブリッジ、インレー、コア、義歯(破片やクラスプなども含む)等を想起する読者も多いと思うが、タービンやエンジンのバー類、リーマーなどの治療器具の誤嚥も意外に多い。

 タービンのチャックの不具合などばかりでなく、患者が治療に非協力であるためにタービンヘッドを噛みこんでバーが脱落することもある。このため、在宅診療や認知症患者の治療など、今後増加することが見込まれる診療形態を考慮すると、特に注意が必要と思われる。

 高齢者では軟口蓋、咽頭、舌根の連携が不十分であるために、口腔内に落下した異物が何の抵抗もなく咽頭に消えていくこともあり、さらに、気道に異物が入っても咳一つしないことも珍しくない。「気道に入ったら咳き込む」と思い込むのは危険である。

 「頭位を低くして、異物を口腔に吐き出させるように前かがみにさせなさい」と教えられた方が非常に多い。

 しかし、これは半分正しいが、前提が間違っている。歯科ユニット上で水平位診療をしていた場合を例に考えてみる。誤嚥が発生し、患者を前かがみにさせる歯科医師が圧倒的に多い。頭位を低くする理由・目的は、重力の助けを借りて異物を吐き出させる、あるいは気管や食道に異物が落ち込まないように保つことである。

 ところが、一度上体を起こして頭位を高くしてから前かがみにした場合は、途中で重力により異物は下の方向、すなわち気管や食道に移動してしまうのである。

 そこでまず、水平位に体を保ったまま、右側臥位を取らせる。重ねて強調するが、上体を起こすことなく保ち、口腔、咽頭を覗くのが正解なのである。

 異物は気道や食道に入る前に、必ず咽頭を通過する。このため、咽頭腔に異物が留まっていると、患者は指で下顎の下側の喉のあたりを指して「ここにあるような気がする」とか、「ここに異物感がある」と訴える場合が割と多い。このような訴えがある場合は咽頭にまだ異物が留まっていることが期待できる。

 喉頭蓋よりも上側の咽頭腔に異物が留まっている場合には、ミラーや小内視鏡、喉頭鏡などで異物を発見・同定できるし、鉗子の使用はもちろんであるが、物によってはバキューム(先端は外科用サクションが良い)、ペアンなどでも摘出できることがある。

 これが無駄であった場合に、胸部X線と腹部X線を撮影することとなる。異物が気道内に存在する場合は内視鏡による摘出を行う。食道・胃内に異物が存在する場合も内視鏡の適応がある。消化器内異物が移動するのをX線画像上で経過観察して排泄を待つことも一般に行われるが、腸に穿孔した症例の報告もあり、異物の形態、大きさ、患者の状態などを考慮して、対処法を消化器専門医(外科、内科)と協議・決定する必要がある。

 誤嚥事故が発生した際は初期対応が非常に大切であることを心に刻み込んでおいてほしい。



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