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2018年11月 2日 (金)

Clinical 口腔診療に重要な関連知識 ③

続き:

3. 口蓋

 口蓋は口の上蓋であるだけではなく、非常に大切な調音・構音装置である。言語を用いて会話ができることは、人間として存在するための最重要な機能の一つだ。四足の動物は、顔面を正面に向けて歩行するため、口裂~喉頭まで直線的に、地面に対して平行に気道が位置している。

 これに対し、ヒトは直立したために、垂直の喉頭・咽頭~気道が直角に前方に屈曲して口腔が独立したのである。顔は前面を向いていないと移動方向の情報を得ることができないので、直立した時に顔と一緒に口裂が前面を向いたために、気道が屈曲して口腔が独立器官となり、多くの異なった繊細な音を作り出せるようになったのである。

 もし繊細な音により構成される複雑な言語を獲得することができなかったら、現在の人類の繁栄はなかったと考えられている。

 この多くの音を作り出す機能は、母音と子音の組み合わせにより構成されている。一般の方に分かりやすいように、子音の内、いくつかのものが調音・構音の部位がある。「か、き、く、け、こ」は口腔の奥深い部位で「ka、ki、ku、ke、ko」と子音と母音の組み合わせにより調音・構音され、「た、ち、つ、て、と」は「ta、ti、tu、te、to」と、「k」よりも前の部位で調音・構音される。さらに前方で「さ、し、す、せ、そ」は「sa、si、su、se、so」と調音・構音される。

 このように、舌と口蓋が特定の部位で接触することにより特定の子音を作るのである。言い換えると、舌が口蓋に触れる位置の相違により、子音も異なって調音・構音され、本来の接触部位と異なる位置での接触は誤った調音・構音をもたらすこととなる。

 これは、口蓋裂患者の構音の評価ばかりでなく、口腔機能の発達が不十分な児童、脳卒中患者などの言語機能評価と治療のための指導には不可欠な知識である。

 高齢者の増加により、義歯の需要も多くなってくるものと思われるが、義歯の製作と調整に於いて、調音・構音機能は重視しなければならない。このため、今後、調音・構音部位を意識した歯科診療、特に補綴診療が求められる機会が増加するものと考えられる。

 その際に、アルジネート粉末をまぶしたロウ義歯、あるいは義歯を用いたパラトグラム検査が簡便・有用である。患者が不満に思われている音を発音してもらうことにより、ロウ義歯や義歯に対する舌の接触点がアルジネート粉末を除去することにより印記される。印記されたパターンを解析するのだが、前後の調音部位の偏在だけでなく、左右差による異常(側音化)も検出でき、義歯の形態を細かく調整することが可能となる。

 口蓋で注意すべき解剖は、大口蓋動脈である。大口蓋動脈本幹は歯槽部の基部に位置し、口蓋溝に入り込んで走行している。大口蓋動脈は硬口蓋ばかりでなく、軟口蓋にも多くの枝を出している。

 また、大口蓋動脈は切歯管にも交通している。口蓋弁などを形成するような口腔外科手術においては、大口蓋動脈の深さに注意を要する。というのは、口蓋溝という溝に入り込んで走行しているからである。

 万一、一般歯科治療時に大口蓋動脈を損傷した場合に、口蓋溝に入って走行していることが原因で、止血が困難なことがある。即ち、針糸を用いて大口蓋動脈の走行に直行するように深く刺入して結紮止血を試みた場合に、血管が溝の中に沈んでいるため、血管をうまく捉えることが比較的困難である。

 このため、圧迫止血が基本であるが、止血シーネ等が用意されていない場合は用手止血となるため、長時間の圧迫は無理であり、結局永久止血まで至らないことが多い。

 また、手術用の大型電気メスやバイポーラーで止血することは容易であるが、一般の歯科外来用の電気メスでは止血できないこともまれではないため、注意が必要である。



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