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2018年11月16日 (金)

Clinical ~局所麻酔のコツとポイント~ ②

続き:
2. 安全で確実な局所麻酔効果を得るポイントは?
1) 局所麻酔薬の使い分け
 現在、日本国内でしか適応のある注射用局所麻酔カートリッジ製剤は、2%リドカイン塩酸塩製剤、3%プロピトカイン塩酸塩製剤、3%メピバカイン塩酸塩製剤の3種6製品で、すべてがアミド型の局所麻酔薬である。
 これら局所麻酔製剤を患者によって上手に使い分けることで、安全で効果的な局所麻酔を患者に提供することが可能となる。
 リドカイン塩酸塩製剤とプロピトカイン塩酸塩製剤には、血管収縮薬としてそれぞれアドレナリンとフェリプレシンが添加されている。3種中でリドカイン塩酸塩製剤は最も麻酔作用が強く、長時間作用性であるため、通常の歯科治療はもちろん下顎臼歯部などの麻酔が奏功しにくい部位、観血処置、長時間の手術に適している。
 リドカイン塩酸塩製剤に添加されているアドレナリンは、循環を亢進させる作用が大きいため、肥大型心筋症や虚血性心疾患、コントロールされていない高血圧症や甲状腺機能亢進症などの医科疾患を有する患者の歯科治療では、フェリプレシン添加のプレピトカイン塩酸塩製剤の使用が推奨される。
 しかし、プロピトカイン塩酸塩製剤はリドカイン塩酸塩製剤に比べて麻酔の効果発現が遅く、麻酔効力も弱いため、使用時には十分な量(カートリッジ1本)を注射し、効果発現のために少なくとも5分以上待つ必要がある。
 また、カートリッジ4本以上使用した場合には心筋酸素需給バランスが悪化(冠動脈狭窄)するため、虚血性心疾患患者には注意が必要である。
 メピバカイン塩酸塩製剤はリドカイン塩酸塩製剤同様、速やかに強い麻酔効果を得ることができるが、血管収縮薬が添加されていないため、観血処置は不向きで、使用時には十分な量(カートリッジ1本)を使用する必要がある。
 また、短時間作用性(30分程度)であるため小児の浸潤麻酔(咬傷の予防)や短時間の歯科治療、医科合併疾患を有する患者に対して比較的安全に利用できる利点がある。
2) 表面麻酔法の併用
 歯科における局所麻酔の大きな特徴は、感覚が鋭敏で痛点が豊富な口腔粘膜へ注射針を刺入する必要がある。局所麻酔時の針の刺入部位は、当該歯根尖相当部の歯肉頬移行部がが選択されるが、歯肉頬移行部には多くの痛点が分布。それで一般に痛点は臼歯部よりも前歯部に多く、歯間乳頭部よりも付着歯肉部~歯肉頬移行部にかけて多い。口蓋部では口蓋皺襞溝部、切歯乳頭部、軟口蓋移行部で多い。
 表面麻酔法は、口腔粘膜の痛点に分布する自由神経終末を麻酔する方法で、注射針刺入時の痛みを緩和するのに効果的で、患者のストレス軽減と快適な歯科治療を提供するためにも可能な限り応用すべきである。
 口腔粘膜上皮は部位によって被覆上皮の厚さが異なり、上皮が薄い分方が麻酔薬の吸収は良い。硬口蓋、遊離・付着歯肉に比べて歯肉頬移行部のほうが被覆上皮は薄く、非角化上皮であるため表面麻酔薬の吸収性は良く、その効果は高い。
 歯肉頬移行部には痛点が多く存在するが、他の口腔粘膜上皮と比べて表面麻酔薬の吸収が良好であるため、積極的に表面麻酔を応用すべきである。
 表面麻酔薬の量は必要とする麻酔範囲(注射針刺入部)に合せて適宜調節すべきであるが、使用量を多くしても麻酔される範囲が広くなるだけで、表面麻酔効果に差は無い。
 また、表面麻酔薬は注射用麻酔薬に比べ高濃度であり、口腔粘膜は吸収性が良いため、中毒やメトヘモグロビン血症の可能性を考えて、その使用量は最小限とする。
 貼付用局所麻酔剤60%リドカイン塩酸塩テープ(ペ ンレステープ 18mg)は口腔内の表面麻酔薬として高い効果が得られるとの報告がある。この研究では、本剤を1/6~1/3程度の大きさにカットしたものを直接口腔粘膜に2~5分間貼付することで、極めて良好な表面麻酔効果が得られるとしている。
 しかし、本剤は皮膚専用で口腔粘膜への適応はないため、口腔粘膜の表面麻酔剤として使用する場合は「適応外使用」となる。また、これは60%と極めて高濃度であるため、長時間の貼付は中毒の危険性がある(1/6カットの大きさであれば1~2分程度が安全)。
 医薬品の適応外使用によって生じた副作用による健康被害に対しては、「医薬品副作用被害救済制度」の対象とはならず、医療費の給付を受けられないことになる。
 したがって、本剤を口腔粘膜の表面麻酔として使用する場合には、この点を患者に十分に説明して同意を得る必要があるのだ。
 
 




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