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2018年11月17日 (土)

Clinical ~局所麻酔のコツとポイント~ ③

続き:
3) 歯間乳頭部への浸潤麻酔法
 前述したように、下顎臼歯部の皮質骨は厚く、根尖までの距離も遠いため、根尖相当部への通常の浸潤麻酔では十分に麻酔を奏功させるのは困難であることが多い。
 しかし、下顎骨臼歯部の歯間乳頭部歯槽骨縁には、骨体部に比べ比較的多くの骨小孔が存在するため、乳頭部に注射された麻酔薬はこの骨小孔を通して根尖にまで到達しやすい。
 リドカイン製剤であれば、該当歯近・遠心の歯間乳頭部へ局所麻酔薬を約0.25mLずつ注入し、残りを根尖相当部歯肉(歯肉頬移行部)に注入することで比較的良好な麻酔効果を得ることができる。
 それでも麻酔効果が不十分な場合には、下顎孔伝達麻酔や歯根膜内麻酔を併用する。
 歯間乳頭部の浸潤麻酔における注意点として、歯間乳頭部は歯肉頬移行部に比べ痛点は少ないが、麻酔薬を強圧で注入してしまうと注入時痛が強くなり、術後針刺入部に潰瘍を形成することもあるため要注意だ。
4) 歯根膜内麻酔法の実際
 歯根膜内麻酔は、注射針を歯頸部(歯肉溝)~歯根膜腔内に直接刺入し、少量の麻酔薬を直接注入する方法である。当該歯にのみ麻酔を迅速に奏功させることが可能で、他の歯や周囲組織にまで麻酔効果が波及することはない。
 注射針の刺入部位は、単根歯では唇・頬側近心隅角部、複根歯ではこれに加えて唇・頬遠心隅角部口蓋側中央部である。使用する麻酔薬の量は1歯根あたり0.2mLが基準だが、効果が不十分な場合にはさらに0.2mL追加投与を行う。
 下顎の大臼歯部などでは、初めから0.4mL注入したほうが麻酔効果は高い。
 歯根膜内麻酔では、薬液の強圧注入や注射針などによる物理的な歯根膜組織損傷を起こしやすく、治療後の咬合時痛、歯根膜炎、抜歯後の治癒不全、ドライソケットなどを引き起こす可能性があるため、十分な配慮が必要。
 また、当該歯の歯肉溝が歯石やプラーク等で不潔な場合には根尖部への感染リスクを回避するため、注射針を遊離歯肉部より歯肉を貫通して歯根膜腔内へ刺入させる。―― その方法が良い。
5) 注射針の選択
 注射針の太さはG(ゲージ)で表されるが、ゲージ(数字)が大きくなるほど針の径は細くなる。一般的に浸潤麻酔には30Gが使用されるが、伝達麻酔では、針のたわみが少なく吸引操作のしやすさから25Gまたは27G、歯根膜内麻酔では、歯根膜腔への刺入のため 31G または33G が用いられる。
 歯科用注射針の太さと痛みに関する研究報告では、細い針のほうが刺入時痛は少ない傾向にある、しかし、注射針の太さによる有意な痛みの差は認められていない。
6) 局所麻酔薬の注入圧(速度)と痛み
 局所麻酔(浸潤麻酔)時の痛みの原因の一つに、麻酔薬の注入圧(速度)による痛みがある。これは薬液注入による粘膜組織内圧上昇(侵害刺激)に伴う痛みであり、注入速度が速いほど強くなるため、できるだけ低速(0.9mL を10秒以上)で注入することで痛みの少ない局所麻酔が可能となる。
 歯根膜内麻酔では、狭小の歯根膜腔内に麻酔薬を注入する必要があり、注入の際に強圧が必要となるため、歯根膜組織の破壊やカートリッジの破損などを生じる可能性がある。
 これら偶発事故を回避するために1歯根あたり0.2mLを15秒以上かける必要があるとされているが、通常の注射器では注入圧のコントロールが困難であるかめ、専門用の注射器または電動注射器の使用が推奨される。




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