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2018年11月14日 (水)

海洋プラスチック汚染とは? ⑦

続き:
   <海洋プラスチック汚染をめぐる5つの誤解>
 海洋プラスチック汚染は非常に複雑な問題であり、社会・環境・経済に対して大きな影響をもたらしている。効果的にこの問題に対処し、より良い解決策に向かって取り組むためには、情報を正しく理解することが不可欠である。
 プラスチックの大量生産が始まったのは、1940~50年代、海鳥の胃袋からプラごみが発見されたという最初の研究が出されたのは1969年だ。その数年後の1972年には、サルガッソー海の西側の海面にプラスチックペレットが集まったものが漂流しているという研究が発表されている。
 しかし、多くの人々の注目を集めたのは、1997年に、「巨大な太平洋ごみ海域」が発見されたときだった。海洋プラスチック汚染についての研究が盛んになってきたのはこの10数年のことなのだ。
 さまざまな研究者が伝える努力をしているにもかかわらず、問題が複雑であることと、短期間に知識量がうなぎのぼりに増えたことがあいまって、海洋プラスチック汚染を巡る多くの誤解がある。最もよく見られる5つの誤解を取り上げよう。
 ①「海にプラスチックの島が浮かんでいる」
 「太平洋のどこかにレジ袋やプラスチック袋の大きな島が浮かんでいて、その大きさは米国テキサス州よりも大きいらしい」という話をよく聞く。
 「そのプラスチック島は固まっているので、動物がその上を歩き回ることができる」という話も聴く。
 しかし、これはまったくの間違いである。実際には、「プラスチック島」といったものは存在していない。
 ②「海でプラスチックが集まっているところを一掃すれば、海洋プラスチック汚染はなくなる」
 海洋プラスチック汚染は海底~海面までのあらゆる深さに存在しており、魚やウミガメ、クジラといった海洋生物の胃袋の中にさえ蓄積している。目に見えるものは、魚網やペットボトルなどだが、最も多く有るものは、5mm以下のマイクロプラスチックだ。つまり、肉眼で見えるものも見えないものも含め、数百万トンものプラスチックが海洋に散在しているのが現実であって、一掃することは不可能とは言わないまでも、非常に難しい。
 この現実を踏まえて、「プラスチックの島」と言わずに、「プラスチックのスモッグ」と言おうという動きもある。
 ③「海洋プラスチック汚染の原因は、プラスチック業界、クルーズ船、漁業だ」
 確かに、プラスチック業界や漁業、クルーズ船は海洋プラスチック汚染の大きな原因の一つになっている。しかし、原因はそれだけではない。多くのプラスチックが海洋に流出するのは、廃棄物管理システムの不全や我々自身の使い捨て行動のせいでもあるのだ。
 国際的な研究によると、世界中の海岸で多く見られるプラスチックは、タバコの吸い殻、ペットボトルとそのキャップ、食品の包装材、ビニール袋やレジ袋、プラスチックのフタ、ストロー、撹拌用スティック、発砲スチロールの持ち帰り容器である。
 こういった馴染みの日用品が海岸にあるのは、多くの場合、ごみの捨て方がまずいためだ。つまり、我々ひとりひとりが海洋プラスチック汚染の問題に手を貸しているのだ。
 ④「生分解性プラスチックは、海洋に優しい代替材料である」
 これは、自然に分解し、害を与えることなく環境から消えていくことができる。と聞けば、海洋プラスチック汚染に対する完璧な答えだと思うかもしれないが、実際にはそれほど簡単な話ではない。
 生分解性プラスチックに関して、国連環境計画のレポート(2018年)では、「現在の科学的証拠を見ると、”生分解性”とラベルのついたプラスチック製品を用いても、海洋に流入するプラスチックの量や、海洋環境への物理的・化学的な影響のリスクを大きく減らすことにはならない」と結論づけている。
 同じレポートでは、「プラスチックの完全な生分解が起こる条件は、海洋環境ではほとんど存在していない」としているのだ。
 そして、生分解性プラスチックは、問題を悪化させる可能性すらある。「プラスチックが生分解性かどうかに関する認識は、ごみ捨て行動に影響を与える可能性がある」ことを示唆する研究結果があるからだ。もらったレジ袋に「このレジ袋は生分解性である」と書いてあれば、不適切に捨てられる可能性が高くなる。
 本当な問題は、我々がプラスチック製品をどう使うか、使い捨てプラスチック製品を多用するライフスタイルをどう変えることが出来るかで有る。これは生分解性プラスチックでは解決できない。
 ⑤「リサイクルさえすれば、問題は解決できる」
 金属やプラスチック、ガラス、生ごみの有機物など、使わなくなったものを分別し、リサイクルすることは、必要かつ大事なことである。しかし、毎日世界中で生産され、消費されているプラスチックの量は、今日のリサイクルシステムが対応できる量を大きく超えている。実際、現在リサイクルされているプラスチックは全体の9%しかないのだ。
 「プラスチックのリサイクルは、その最終的な廃棄を遅らせるだけ」と指摘する研究者もいる。さらに、プラスチックによって、特性や化学成分がさまざまに異なるため、すべてのプラスチックを同じやり方でリサイクル出来るわけではない。
 「異なる種類のプラスチックをリサイクルしようとすると、技術的にも経済的にも価値の低い再生プラスチックが出来るだけ」という指摘もあるのだ。
   続く―――→ 海洋プラスチック汚染の影響の大きさ、対処しようとする世界の取り組みへの紹介、これから先の日本の対応について。





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