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2018年12月30日 (日)

Clinical 口腔がん術後機能障害に対する歯科医師の役割とその治療の基本的手技 ④

続き:
3) 舌欠損
 口腔がん発症部位は舌が最も多く、口腔がん全体の約6割を占める。舌切除症例では切除範囲、部位により、術後機能障害が全く生じないケースから、重篤なものまで多岐にわたる。
 一般的には切除範囲が舌半側を超えるケースや舌根部を含むケース、また、舌部分切除であっても癒着などにより可動性が不良の場合は、嚥下や構音機能に重篤な障害をもたらす。
 舌欠損による機能障害には、一般的に舌接触補助床(以下 PAP)(2010年より保険収載)が応用され、一定の効果をあげている。しかし、咀嚼、嚥下、発音は複雑な舌運動により成立している機能であり、舌欠損の代償として上顎にセットされる PAP ではすべての機能障害の回復は困難である。正確な嚥下動態や構音の評価、診断には非常に高い技術が要求される。
3. 顎補綴装置の製作法
1) 診査・治療計画・インフォームドコンセント
 歯科医師が術前よりがん治療に介入し、予測される欠損範囲や現存歯の状態などから、患者に対し、術後機能障害の程度予測、その後の歯科治療により期待できる機能回復程度、手術から顎補綴治療開始までの期間、残存歯の処置、装置製作にかかる治療回数、生涯にわたり顎デンチャーの調整や現存歯の管理を要することまで説明を行うことが理想である。
 特に、医療者側の考える機能回復程度と患者本人の期待する機能回復程度に隔たりがあることも念頭に置いたうえで、十分に時間をかけて説明を行う必要がある。
2) 印象採得(概形印象、最終印象時のコツと注意点)
 咬合平面からみた顎欠損部と健常部の高低差が大きいため、概形印象採得時には既製トレーにユーティリティーワックスやモデリングコンパウンド等を盛りつけ、ある程度形態を合わせてから行う。アルジネート用接着剤を塗布すると剝がれにきい。
 上顎洞や鼻腔との交通路が小さいときは印象剤の迷入に十分留意する。小孔より一回り大きいワセリンを付けた綿球やガーゼをあらかじめ留置しておくか、まず混水比を多くした流れの良いアルジネートをシリンジで小孔付近に塗布し硬化させ、接着剤を塗布した後、通法のアルジネート印象を行う2回印象法で迷入は防げる。
 顎欠損周囲部は被圧変位量が大きいことが多く、アルジネート挿入時の印象圧でも大きく変形してしまうことがあるが、この方法であれば顎欠損部は無圧印象に近い状態で解剖学的形態を採得することも可能になる。
 各個トレーは顎欠損部にパラフィンワックス1~2枚分のスペーサーを設け製作。精密印象採得時にはそのスペースにモデリングコンパウンドを置き、十分難化した状態で口腔内に挿入した印象採得を行う。
 モデリングコンパウンドを用いた印象採得は口腔内への出し入れを数回繰り返すが、再挿入の際、トレーの位置がずれると正確な印象採得はできない。
 そのため各個トレー製作時には、付与するストッパーの位置、数、形状に留意し、毎回同じ位置に戻る各個トレーを製作することが重要である。
 ウォッシュ印象採得時のシリコン印象材過多は小孔への迷入を招く。顎欠損部周辺にいくつか遁出孔を設定するとともに、シリコン印象材の塗布量に留意し最終印象を採得する。




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