« Clinical 口腔がん術後機能障害に対する歯科医師の役割とその治療の基本的手技 ② | トップページ | Clinical 口腔がん術後機能障害に対する歯科医師の役割とその治療の基本的手技 ④ »

2018年12月29日 (土)

Clinical 口腔がん術後機能障害に対する歯科医師の役割とその治療の基本的手技 ③

続き:
2) 下顎欠損
(1)  下顎骨辺縁切除症例
   上顎と同様、支台歯となり得る現存歯が存在する場合、通法のパーシャルデンチャー製作方法に従い製作する。しかし、皮弁などによる再建症例では顎欠損部の被圧変位量が大きくなり、顎欠損部に隣接する支台歯の過重負担が著しく増加する。
   顎骨切除術により、歯槽骨の補綴側壁が欠損していることも多く、通常のクラスプを設定すると早期に喪失することがある。特に下顎前歯は歯根表面積が小さくその傾向が強い。そのため、生活歯であっても根面板やスタッドアタッチメントの設計、隣在歯との連結や、歯軸方向に咬合力を伝えるためのコンポジットレジン築盛による舌面結節の付与などの前処置を施し、支台歯の負担軽減を図ることが重要となる。
   無歯顎症例でも、下顎骨辺縁切除の場合、条件が揃えば装置を安定させることが可能な場合があるが、左右側ともに一部でも非可動組織が存在することや、再建部の機能運動時の可動量、被圧変位量、上下顎の対向関係、唾液分泌量など多くの要素が関連するため、補綴治療開始前に機能回復程度を予測し、それを患者に提示することは極めて困難である。
   我々は補綴治療開始前に明らかに顎補綴装置の維持安定性を確保することが困難であると判断できるケースや、顎補綴装置をセットしたものの安定性を確保できなかった場合には、インプラントチームと連携した広範囲顎骨支持型装置(2012年より保険収載、当直体制が整備されている病院であることなどの施設基準あり)を検討していく流れとしている。
(2)  下顎骨区域切除症例
   下顎区域切除の場合は、再建症例であっても咬合を回復することが困難なケースが多い。特に無歯顎の場合は、非可動粘膜が健側が限局しているため、デンチャーの維持安定を得ることが極めて困難であり、広範囲顎骨支持型装置が第一選択となる。
   支台歯となり得る現存歯がある場合は、下顎への顎補綴装置のセットは可能となるが、顎位の偏位により上下現存歯の咬合にずれを生じていることもあり、その場合は歯冠補綴などの前処置を検討する必要がある。
   顎欠損部の人工歯排列は対合歯の挺出防止などを目的とした咬合の付与に留め、健側での咀嚼を指導してゆく。
   非再建症例では患側への著しい顎位の偏位が認められ、有歯顎であっても下顎にセットする顎補綴装置のみで機能回復を図ることは困難となる。偏位した顎位を誘導するための様々な手法が報告されているが、筆者(石崎)は、顎位の長期安定を実現させるのは困難と考える。
   我々は上顎にオクルーザルランプを付与した口腔内装置(2018年より保険収載、「印象採得が困難なもの」で算定)を装着し、偏位した顎位で新たな咬合接触を付与し、咀嚼機能の回復を図っている。
   また、顎位と共に舌も患側に偏位しているに留意し、患側の上顎臼歯が欠如している場合は人工歯臼歯部舌側咬頭の削去などを行い、舌房の確保に努める。




« Clinical 口腔がん術後機能障害に対する歯科医師の役割とその治療の基本的手技 ② | トップページ | Clinical 口腔がん術後機能障害に対する歯科医師の役割とその治療の基本的手技 ④ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック

« Clinical 口腔がん術後機能障害に対する歯科医師の役割とその治療の基本的手技 ② | トップページ | Clinical 口腔がん術後機能障害に対する歯科医師の役割とその治療の基本的手技 ④ »