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2018年12月31日 (月)

Clinical 口腔がん術後機能障害に対する歯科医師の役割とその治療の基本的手技 ⑤

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3) 咬合採得
 通法の咬合採得と基本的な手技に違いは無い。しかし、上顎骨欠損や下顎骨区域切除やプレート再建のケースは、顎欠損側の咬合床の沈み込みが大きく、欠損側の早期接触を招きやすい。このような場合は、咬合床に支台装置をあらかじめ組み込むことにより安定を図り咬合採得の精度向上に努める。
 一方で、支台装置の組み込みにより、咬合床の安定性が見かけ上改善されると、適合性に関するエラーに気付きにくくなるのでその事が必要である。
 周囲可動組織への過度な圧接、床縁の過長等、本来咬合床の浮き上がりとして確認できる項目が支台装置の維持力によって不顕化されるからである。これらが懸念される場合は、多少繁雑になるが、まず支台装置を組み込み、咬合採得を行うことがある。
 上下顎切除症例、頬粘膜がん術後症例の特徴的な症状の一つとして、開口障害がある。著しい開口障害を呈する場合は、たとえ顎義歯製作、セットが可能てあっても食物の挿入が困難なることがある。その場合は、顎義歯セット後の開口量の確保を目的に、あえて低位の咬合高径を付与することを検討する。
 また、舌切除による嚥下困難症例に対しては、現存歯による咬合接触がある場合は通常 PAP で対応するが、無歯顎やそれに準ずる咬合状態の場合には、開口障害症例と同様、低位の咬合高径の付与を検討する。
4) 試適
 顎欠損症例特有のロウ義歯試適時の診査項目を挙げる。
(1) 排列位置
   上顎や頬粘膜切除症例では、瘢痕収縮による上唇の伸展性の低下により、義歯セット時に口唇閉鎖不全が生じることがあるので、前歯部人工歯排列位置、傾斜などに留意する。口唇閉鎖不全は審美障害や構音障害だけでなく、唾液や飲料の口腔内保持の困難により流唾や輸送の障害を惹起させる大きな問題である。
 歯槽堤や臼後結節など排列の指標となる解剖学的構造物の喪失は、排列を困難にする。そのような場合は左右対称性、対顎の位置を根拠に排列位置を決定する。
(2) 口蓋の研磨面形態
   上顎顎欠損症例では半側切除まであれば、左右の対称性に留意しながら形態を付与」できるが、正中を超える上顎骨欠損の場合、患者固有の郊外の高さや幅径を再現することが困難になる。
   術前の研究用模型や口腔内写真などがあれば歯科技工士に提供する。それらが無い場合は、医療機関に術前の CT 画像データから3D プリンターで参考模型を製作してもよい。
   構音機能や嚥下機能に調和する口蓋部を製作し確認する作業は、既存の口蓋の上に設定した床や連結装置による違和感の有無を確認する一般補綴治療時の試適時診査とは大きく異なる。




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