« Clinical 歯科医師のがん対応能力の向上 ③ | トップページ | Clinical 歯科医師のがん対応能力の向上 ⑤ »

2018年12月19日 (水)

Clinical 歯科医師のがん対応能力の向上 ④

続き:
3) 口腔がん検診の今後の発展
 近年、日本全国において郡市区歯科医師会が主体となり、地域の基幹病院と連携し数多くの口腔がん検診を開催している。歯科医師会が、自ら口腔がんや口腔粘膜疾患の知識の向上に努め、行政への口腔の健康増進の提言を行うなど、かってない展開を示している。
 現時点では、郡市区歯科医師会に所属する歯科医師と基幹病院の歯科口腔外科専門医で、各地区の現状に鑑み集団検診が行なわれているのが一般的である。例えば、デンタルフェアや他のイベントに合わせ歯科医師会の事業の一貫として行う事が多い。しかし、口腔がん検診の有効性を考えた場合、集団検診は市民への啓発として効果的であるが、効率よく早期癌を発見するための手段としては適さない。
 集団検診は、時期を決めて一か所に集めて実施する方法で、専門医による検診が受けられるというメリットがある。一方で、検診できる数には限度がある。また、健康意識が高い市民が検診を希望する場合が多いため、リスクファクターのある患者を効率よく拾い上げることが難しい。
 これに対し、個別検診は一般歯科診療所で行う検診であるため、いつでも受診可能あることから対象が広がるといった利点がある。しかし欠点は、すべての検診者(歯科医師)に一定の口腔がんの診断能力が求められる点だ。― 診断能力の均てん化を図るためには、口腔がんを含めた多くの口腔粘膜疾患の知識を持った歯科医師の要請が望まれる。
 しかし、通常の歯科業務の中でこのような新しい知識、技能を完全に補完することは容易ではないため、何らかのサポートシステムが必要である。現在筆者(野村)の所属する、NPO法人口腔がん撲滅委員会では、こうした検診者の知識の伝達や技術的サポートを支援する体制を構築しており、このような事業が少しずつ広がりを見せている。
4) 次世代に向けた検診システム
 細胞診は、個別検診が全国に普及するためになくてはならないツールだ。一方この検査の限界として、最小限ではあるが、侵襲が加わること、そして、病理組織学的検査に比べ正診率が低いことが挙げられる。今後、これに変わる新たなスクリーニング法の開発が望まれる。
 一つの例であるが、現在我々が取り組んでいる試みとして非接触型の蛍光光学機器を用いた口腔がんスクリーニングの有用性に関する研究がある。通常、口腔粘膜に400~460nmの声色光を照射すると、健常上皮組織と皮下組織から青緑(Apple-Green) 色の自家蛍光色が起こされる。しかし、前癌である上皮性異形成組織や癌組織では、蛍光発色が低下し蛍光ロスとして暗く描出される。この発色の差を利用して、早期癌描出のために開発されたのが口腔粘膜観察装置である。
 健常上皮組織が青緑色の蛍光発色を呈するのは、細胞内に蛍光物質であるFAD補酵素や間質にコラーゲン組織があるためだ。一方、上皮性異形成組織や癌組織では代謝によりFAD 補酵素が消費されたり、コラーゲン組織が癌の浸潤により破壊されるため蛍光発色の低下につながる。
 現在口腔粘膜観察研究会を発足し、多くの症例を蓄積してエビデンスを構築中である。本機器は、現在株式会社 松風 より口腔粘膜観察装置として販売されている。このような非侵襲的かつ簡便に口腔粘膜を観察できるような新たな診断機器が普及すれば、歯科医師や歯科衛生士が口腔粘膜に目を向けるきっかけとなり、口腔がん検診の対応力向上が一歩前進するものと期待している。





« Clinical 歯科医師のがん対応能力の向上 ③ | トップページ | Clinical 歯科医師のがん対応能力の向上 ⑤ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Clinical 歯科医師のがん対応能力の向上 ④:

« Clinical 歯科医師のがん対応能力の向上 ③ | トップページ | Clinical 歯科医師のがん対応能力の向上 ⑤ »